研究課題/領域番号 |
16K08085
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
三好 和睦 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (70363611)
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研究分担者 |
佐藤 正宏 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (30287099)
川口 博明 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (60325777)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 体細胞核移植 / 疾患モデル動物 / マイクロミニピッグ |
研究実績の概要 |
昨年度の研究において、胎児線維芽細胞3(FFs 3)のp53およびphosphatase and tensin homolog deleted on chromosome 10(PTEN)遺伝子をノックアウト(KO)し、遺伝子改変細胞株(p53/PTEN#1)を樹立することに成功した。そこでまず、p53/PTEN#1由来クローン胚の体内発生能について調べるために3頭の仮親にそれらを移植してみたが、いずれにおいても妊娠は成立しなかった。遺伝子改変していないFFs 3をドナー細胞として用いた場合にも体細胞クローン動物は得られなかったので、p53/PTEN#1由来クローン胚は産子にまで発生しない可能性がある。そこで次に、体細胞クローン動物は作出できたが、p53およびPTEN遺伝子KO株は樹立できなかったFFs 1を用いてクローン胚を作出し、その細胞質にCRISPR/Cas9関連成分をエレクトロポレーションで導入する遺伝子改変法の有用性について検討した。なお、p53およびPTEN遺伝子のKOが胎生致死を誘発しているかもしれないので、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子を標的とした。最初に、種々のエレクトロポレーション条件下でLDLR遺伝子に対応するcrRNA/tracrRNA complexおよびCas9 proteinを導入したクローン胚の体外発生および遺伝子改変状況について検討し、LDLR遺伝子KO胚盤胞を効率的に作出できる手法を確立した。次に、エレクトロポレーション後のクローン胚を3頭の仮親に移植してみたが、いずれにおいても妊娠は認められなかった。以上の結果から、エレクトロポレーション法を用いて体細胞クローン胚へCRISPR/Cas9関連成分を導入することにより、効率的に遺伝子KO胚盤胞を得られることが明らかとなった。しかし、仮親に移植しても妊娠が成立しなかったので、産子への発生率が極めて低い体細胞クローン胚の利用には限界があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子KO胚盤胞を効率的に生産できるようにはなったが、まだそれらに由来する産子を得ることには成功していないから。
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今後の研究の推進方策 |
食用ブタにおいては、食肉センター由来卵巣から採取した卵子を体外受精することにより、エレクトロポレーションに供する多数の受精卵を準備することが可能である。しかしマイクロミニピッグにおいては、卵巣が食肉センターに出荷されることはないので同法を用いることはできない。よって、マイクロミニピッグ体細胞を除核した食用ブタ卵子に移植して多数のクローン胚を作出し、エレクトロポレーションに供した結果、効率的に遺伝子KO胚盤胞が得られた。しかし、エレクトロポレーションした胚を仮親に移植しても妊娠が成立しなかったので、産子への発生率が極めて低い体細胞クローン胚の利用には限界があることが示唆された。よって、コストは掛かるが、マイクロミニピッグから体内受精卵を採取してエレクトロポレーションに供してみたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の業務と重なったので、予定していた学会への参加を取り止めたため。また、学生アルバイトを頼まなくても、充分な数の体細胞クローン胚を作出することができたため。 次年度には体内受精卵採取用および仮親用として多数のマイクロミニピッグを使用するので、その購入に充てたい。
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