研究課題/領域番号 |
16K08087
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
羽山 伸一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80183565)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原子力災害 / ニホンザル / 放射線影響 |
研究実績の概要 |
本研究では、2011年3月に東日本大震災に伴って爆発した福島第一原発から放出された放射性物質に被ばくした野生ニホンザルを対象に、筋肉中セシウム濃度を測定するとともに、臨床医学的検査および病理学的検査を行い、被ばくによる健康影響を明らかにする。2017年度は、福島市に生息するニホンザル95頭の死体を回収し、解剖分析および血液検査に供した。 筋肉中放射性セシウム濃度は、ほとんどの個体で数十~数百Bq/kgを示し、2011年当時から徐々に低減しつつあるが、1000Bq/kgを超す個体も未だにいるため、高濃度に汚染した食物を摂取している可能性が示唆された。 原発災害前後における胎仔の成長や形態的変化を明らかにする目的で、2008年から2016年に福島市で採取した胎仔の外部計測を行った。これまで原発災害があったチェルノブイリと福島のいずれでも、同一の野生動物個体群における胎仔の成長を経時的に調査して災害前後で比較した研究は見当たらず、本研究がはじめてとなる。 原発災害前に妊娠した胎仔35個体と災害後に妊娠した個体32個体において、CRL(crown ramp length・頂臀長) に対する体重および頭部のサイズ(頭蓋の最大長径と最大横径の積)の相対成長を比較したところ、災害後の胎仔で体重と頭部のサイズのいずれも有意に低下していることが明らかとなった。頭部のサイズとCTスキャナーで計測した頭蓋容積は高い相関を示すことから、脳の発達が抑制されていることも予想された。これらの胎仔の母親の栄養指標に有意差は認められず、観察された発育遅滞は放射線被ばくの影響が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、捕獲個体の回収や分析が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
胎仔における脳の発達抑制が示唆されたことから、脳神経の組織学的検査を継続する。また、血球減少症が骨髄への放射線影響の結果であることも予想されるため、骨髄の組織検査を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 昨年度末に発注を予定していた標本作成が4月にずれ込んだため、予定していた予算が繰り越しとなった。 (使用計画) すでに繰り越し分の発注は済んでいるため、問題はない。
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