研究課題/領域番号 |
16K08095
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
岩永 将司 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40400717)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 持続感染 / BmMLV / マキュラウイルス / カイコ / RNAウイルス / small RNA / siRNA / piRNA |
研究実績の概要 |
Bombyx mori macula-like virus (BmMLV)は、カイコ、及びクワコ由来培養細胞特異的に持続感染しているプラス鎖RNAウイルスである。特に、BmMLVをウイルス陰性VF細胞へ接種したRNA-seq解析では、BmMLVのリードは全トランスクリプトのおよそ16%にも達することから、その持続感染のコアメカニズムは非常に興味深い。このメカニズムを解明するため、本年度はRNA-seq解析を更に詳細に行うと共に、ウイルスゲノム由来のsmall RNA を詳細に解析した。その結果、siRNAはBmMLVのゲノム全体から産生されている一方で、近年新たなクラスとして着目されているpiRNAがサブゲノミックRNA領域から産生されていることが判明した。そこで、急性感染と持続感染を比較するため、ウイルス非感染細胞へ新たにウイルスを感染させたサンプルと、ウイルスを既に2年以上持続感染状態にさせたサンプルを準備し、small RNAの比較を行った。その結果、急性感染ではsiRNAが産生される一方で、持続感染ではsiRNAだけでなくpiRNAが産生されていることが明らかとなった。そこで、siRNAやpiRNAの関連因子をノックダウンした結果、予想通り、急性感染ではsiRNA関連遺伝子のノックダウンによってBmMLVのRNA量が増加し、持続感染ではsiRNAとpiRNAの関連遺伝子のノックダウンによってBmMLVのRNA量が増加した。これらの結果は、BmMLVの初期(急性)感染では、宿主の生体防御としてsiRNA経路だけが発動していたにも関わらず、旺盛なBmMLVの増殖に対応してpiRNA経路が新たに発動することを意味し、即ち、この様なウイルスと宿主のせめぎあいが、結果としてウイルスの持続感染状態をもたらしていると考えられた。本研究成果は非常に興味深く、今後、サブゲノミックRNA領域へと変異導入可能なベクター作りに取り組み、piRNA産生経路が発動する仕組みを明らかにしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的はBmMLVの持続感染に関するコアメカニズムの解明である。その一環としてウイルス由来のsmall RNAの解析は順調に進んでおり、本年度DNA Research誌へと論文を発表することが出来た。併せて、本研究成果は大学からプレスリリースされており、学会等の発表と併せ、その研究成果を広く伝えることが出来た。また、宿主側に与える影響として細胞接着因子等の解析、更にBmNPVとのウイルス-ウイルス間相互作用についても新たな知見が得られた。以上より、本年度は当初の計画以上に研究が進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、piRNAを始めとしたsmall RNAの解析を進めるだけでなく、細胞接着因子を始めとする種々の宿主因子について、ウイルス感染後における転写誘導の意義を明らかにするための機能解析を進める。更に、BmNPVとBmMLVとのウイルス-ウイルス間相互作用について解析を進める予定である。
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備考 |
DNA Research誌への論文発表にあわせて、研究成果をプレスリリースした。
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