研究課題
Bombyx mori latent virus (BmLV)は、カイコ、及びクワコ由来培養細胞特異的に持続感染しているプラス鎖RNAウイルスである。興味深いことに、系統解析の結果、BmLVは植物ウイルスであるチモウイルス科のウイルスに高い類縁性を示すにもかかわらず、その宿主はカイコ、及びクワコ由来の培養細胞に限られ、カイコ幼虫における増殖性を示さない。しかしながら、その宿主域がカイコ、及びクワコへ限定されていることから本質的にカイコを宿主とするウイルスであると推定されている。そこで、本年度はBmLVのライフサイクルの一環を明らかにするため、カイコを宿主とするカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)とBmLVを共接種する共感染実験を行った。まず、培養細胞へとBmLVとBmNPVを共接種した結果、BmNPVの増殖は有意に遅延することが明らかになったことから、両ウイルスの相関が示唆された。次に、カイコ幼虫へ両ウイルスを共接種した結果、単独では増殖しないBmLVのRNA量がBmNPVとの共接種によって増加し、ウイルスが増殖することが明らかとなった。更に、詳細な解析を行った結果、BmLVは増殖したBmNPVのウイルス封入体へと封入されており、しかも、感染性を維持していることが明らかとなった。これは、BmLVがBmNPVのウイルス封入体へと相乗りしていることを示すものであり非常に興味深いものであった。今後、他の植物ウイルスなどでもこのような相乗り減少があるのかどうか解析を進めていきたい。なお、本研究課題名にあるBmMLV(Bombyx mori macula-like virus)は、2018年のICTV(国際ウイルス分類委員会)によってBmLV(Bombyx mori latent virus)と改名された。
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Viruses
巻: 11 ページ: 316
10.3390/v11040316
ウイルス
巻: 68 ページ: 137-146
https://www.utsunomiya-u.ac.jp/topics/research/007609.php