研究実績の概要 |
昨年度までに、パイナップルコナカイガラムシDysmicoccus brevipesの有性生殖系統のメス成虫は、性フェロモンとして(1S,2S)-(1,2-dimethyl-3-methylenecyclopentyl) acetaldehydeを生産することを明らかにした。この物質は非常にユニークなシクロペンタン骨格を含むモノテルペノイドで、植物などが生産する一般的なテルペンとはイソプレン単位の結合様式が異なるものであった。そこで、平成31年度は、これまで知られていない他種のコナカイガラムシ類の性フェロモンを比較対象として調査した。その結果、パイナップルコナカイガラムシの性フェロモンに比較的類似したシクロペンタン骨格を有する新規物質が、系統的に異なる種(Pseudococcus baliteus)からも見出された。これを単離し、核磁気共鳴法や質量分析法で解析して、その構造を2-((S)-1,2,2-trimethyl-3-cyclopentenyl)-2-oxoethyl (S)-2-methylbutyrateと決定した。これらのシクロペンタン系のモノテルペノイドが系統的に離れた二種のコナカイガラムシから発見されたという事実は、このような特殊な骨格を生産する生合成経路が何度か独立して派生したことを示唆する。この他、平成31年度はこれらのコナカイガラムシ類のフェロモンや類縁化合物に対する寄生蜂の反応を野外で調査し、複数種のAnagyrus属のトビコバチが誘引されることも明らかにした。次年度は、これらのトビコバチ類がパイナップルコナカイガラムシの有性生殖系統・単為生殖系統に与える影響を調査する予定である。
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