• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

ヒメトビウンカの生殖様式を操作する共生細菌2種と病原性ウイルスとの相互作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08104
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

真田 幸代  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (80533140)

研究分担者 徳田 誠  佐賀大学, 農学部, 准教授 (60469848)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード生活史形質 / スピロプラズマ / ボルバキア / イネ縞葉枯ウイルス / オス殺し / 細胞質不和合
研究実績の概要

共生細菌や病原性ウイルスに感染することで、ヒメトビウンカの生活史形質にどのような影響を及ぼすか検証した。昨年度までに、共生細菌ボルバキアWolbachia(W)とイネ縞葉枯ウイルスRSV(R)に感染した系統と非感染系統を作出し、生活史形質(成虫寿命、幼虫期間)を比較した結果、ウイルス感染がヒメトビウンカの生活史形質に負の影響を与えることが示唆された。
本年度は、これまで作出することができなかった共生細菌スピロプラズマSpiroplasma(S)のみに感染した系統(W(-)S(+)系統)を、野外で採集したボルバキアとスピロプラズマに二重感染した系統(W(+)S(+)系統)に抗生物質テトラサイクリンを吸汁させ、ボルバキアだけ除去することで、その作出に成功した。さらに、この野外系統から、両方とも感染していない系統(NI系統)の作出し、これら3つの組み合わせで生活史形質(成虫寿命、幼虫期間、産卵数)を比較した。また、野外で採集したボルバキアのみに感染した系統(W(+)S(-)系統)からもテトラサイクリン処理でNI系統を作出し、これら2つの系統で生活史形質を比較した。その結果、最初の3つの組み合わせの比較では、幼虫期間が、W(+)S(+)系統>W(-)S(+)系統> NI系統の順で長くなった。一方、成虫寿命、産卵数に違いは見られなかった。もう一方の組み合わせ、W(+)S(-)系統とNI系統の比較では、両者の間に幼虫期間、成虫寿命、産卵数のいずれにも系統の間で違いは見られなかった。これらの結果から、スピロプラズマに感染すると、幼虫期間に負の影響を与え、その負の効果は、ボルバキアと二重感染するとさらに増大されることが示唆された。一方、ボルバキアのみの感染ではヒメトビウンカの生活史形質に負の影響を与えないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度には、当初の研究計画どおりに、野外から採集したボルバキアとスピロプラズマに2重感染しているW(+)S(+)系統から、テトラサイクリン処理によって、スピロプラズマのみに感染したW(-)S(+)系統を作出することに成功した。これらの系統について、生活史形質を計測し、スピロプラズマの感染がヒメトビウンカの幼虫期間に負の影響を与えていることを明らかにすることができた。計画は概ね順調に進捗している。一方、それぞれの系統にイネ縞葉枯ウイルスに感染させ、ウイルスと共生細菌の両方に感染させた系統を長期間維持していることが大変難しく、その生活史形質の測定までには至っていない。原因の一つとしては、ウイルスの経卵感染率が90%程度となっていて、経代している過程で感染率が低下してしまうことであり、実験に供試する際に再度、感染率を高めておかなければならないなど実験の実施に大きな労力が必要なことである。もうひとつの原因としては、スピロプラズマ感染系統を維持する場合、オスについては感染していない系統から導入しなければならないため、交尾のタイミングを外してしまうなどでうまく増殖できないことがある。そのため、スピロプラズマ感染系統の維持も難しい。しかし、本年度末までには順調に増殖する系統を作出することができたため、ウイルス感染系統を作出する準備も整備することができ、この点についても概ね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

昨年度までに作出した2種の共生細菌を様々な組み合わせで感染させた4系統(1.W(+)S(+)系統、2.(W(+)S(-)系統)、3.(W(-)S(+)系統)、4.NI系統(W(-)S(-)系統))を用いて、それぞれの感染系統についてイネ縞葉枯ウイルスに感染・非感染の系統をさらに作出する。共生細菌に感染することが、ウイルスの保毒率、経卵感染率、生活史形質にどのような影響を及ぼすか検証する。これらの組み合わせをすべて同時に実験することが理想であるが、共生細菌とウイルスの組み合わせを入れると、実験に供しうる系統は8通りとなり、繰り返し数(サンプル数)を充分に確保したうえで、全ての組み合わせを同時に実験することは困難である。そこで、繰り返し数を最小限にして、全ての組み合わせで実験を行い、繰り返し数が足りなく、統計解析が難しい場合は、再度、追加の実験を行い、サンプル数を確保する予定である。また、今後は、本課題の資金により契約職員を雇用し、作業を分担しながら実験を行い、膨大な数の実験作業とデータ処理を推進していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度はスピロプラズマの単独系統を作出することが難しく、イネ縞葉枯ウイルスの系統作出までに至らなかった。そのため、当初予定していた定量PCRを用いた、共生細菌やウイルスの増殖率などを調査することができなかった。従って、これらの実験に使用する予定であった、RNA・DNA抽出用キット、定量PCR試薬等の購入の必要性が翌年度に持ち越された。系統の作出には昨年度末までに成功しているので、今後、これらの試薬等を購入し、実験を遂行する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 共生細菌WolbachiaとSpiroplasmaがヒメトビウンカの発育および増殖に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      吉田一貴・真田幸代・徳田誠
    • 学会等名
      九州病害虫研究会第95回研究発表会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi