本課題では、カーボンニュトラルな発電システムである水田に微生物燃料電池(MFC)を設置することで、稲作と同時に発電しつつ、温室効果ガスであるメタンの水田からの放出を抑制する技術を開発することを目指して研究を行なった。また、本研究を通して、水田に設置したMFC(水田MFC)が水田土壌微生物生態系に与える影響を明らかにするとともに、多様な新規電流発生微生物の取得を目指した。平成30年度においては、1)水田の管理方法が水田MFCの起電力に与える影響についての総合考察、2)メタン生成、硫酸還元および電流発生の間の関係の解析についての総合考察、3)水田MFCの設置が土壌微生物群集に与える影響、4)植物の違いが水田MFCの発電と負極微生物群集に与える影響、5)MFCから分離した微生物の起電力について研究を行なった。 栽培期間中に一旦水を抜く中干しは、MFCの発電を著しく阻害すると結論された。メタン生成、硫酸還元および電流発生の間の関係については、メタン生成と発電の間には競合関係がある一方で、硫酸還元は発電に関係しており、硫酸還元を阻害すると発電量が低下することが分かった。水田MFCを設置すると、閉回路か開回路かにかかわらず、電極上には土壌と異なる原核生物群集が発達した。また、閉回路ではGeobacter属細菌の比率が土壌や開回路の負極上よりも高くなっていた。栽植する植物の違いは発電に大きく影響した。電極から分離した電流発生細菌の起電力は、菌株によって様々であった。このように、本研究により水田MFCに関する様々な情報が得られた。
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