研究課題/領域番号 |
16K08110
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
富岡 利恵 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (40456588)
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研究分担者 |
竹中 千里 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 重金属集積樹木 / 内生菌 / Colletotorichum |
研究実績の概要 |
本申請課題は重金属汚染土壌における土壌浄化や汚染拡大防止のための植物被覆促進への重金属集積樹木利用方法の確立を目的に研究を進めている。申請課題の目標はそれぞれ特異的に金属を集積する3樹種(タカノツメ、リョウブ、コシアブラ)を対象にその金属吸収メカニズムの解明と吸収能力の強化を目指し、各樹種の内生菌と金属蓄積との関係性、および樹木体内における内生菌ネットワークの存在を明らかにすることである。 H28年度において、タカノツメとリョウブそれぞれの葉から単離した内生糸状菌(以下内生菌)の金属耐性試験と、内生菌の金属添加培地におけるIAA(植物ホルモンの一種)生産能、キレート物質(シデロフォアと低分子有機酸)生産能を比較した。その結果、両樹種共通してColletotorichum属は金属耐性が高く、特にC. gloeosporioidesは金属添加培地上でもIAAやキレート物質生産能が高いことが分かった。 タカノツメの葉内生菌種相の季節変化についてDGGE解析を用いて調査した結果、土壌中の重金属濃度が高い地域に生育しているタカノツメ葉においては、特に目立って優占する種は確認できなかった。一方、土壌中の重金属濃度が低い地域に生育しているタカノツメ葉においては、C. gloeosporioidesが優占することが分かった。C. gloeosporioidesは重金属に対する耐性が高く、宿主植物にとって有益となると考えられるIAAやキレート物質生産能も高いことから、タカノツメの金属集積に関与している可能性が考えられる。 無菌条件下で生育させたリョウブ苗に、重金属耐性が高く、物質生産能を有する内生菌の摂取試験を行った。接種した菌のうち、C. gloeosporioidesのみ感染確認ができたが、菌接種による苗の明瞭な生育促進および金属集積の増加は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題はタカノツメとリョウブの地上部の調査実験については概ね順調に進んでいる。分析条件検討等で時間を要し、地下部の調査実験については計画よりも遅れているが、H29年度に計画通り進めることができる状況である。 特定の内生菌と宿主植物との関係性を調べるためには無菌植物体が必要である。リョウブについては、無菌植物体作成方法は確立したが、タカノツメとコシアブラについては条件検討を進めている段階である。特にタカノツメについては組織培養が困難ではあるが、カルス誘導法までは確立できている。タカノツメの再分化誘導法を確立できれば、組織培養が難しい他の植物種に対しても応用が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
タカノツメ、リョウブともに、地下部に特に重点をおき.地下部に内生する菌の同定と金属に対する耐性、物質生産能の評価を行うとともに、植物体の生長生理や体内重金属濃度変化に伴う根、茎、葉における内生菌相の変化を把握する。また、無菌体の植物体の用意ができ次第、各種の内生菌と宿主植物の関係性について明らかにするための摂取実験も進める。これらの調査実験より、金属集積に直接的に関わっている菌、または根、茎、葉に存在する内生菌の相互作用が金属集積に関与しているかの推定が可能となる。 コシアブラについては、菌根菌がセシウム吸収に関与していることがH28年度に進めた調査実験により明らかになったため、セシウム吸収に直接的に関与している菌根菌種を単離、同定し、接種試験を行う。
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