本研究では、生物資源である多糖キチンの有効利用を目指し、「細菌P. FPU-7による難分解性キチン分解機構の解明とその応用」を行っている。本年度は、下記の研究を実施した。 (1) P. FPU-7細胞表層に発現するタンパク質の網羅的解析法の確立。P. FPU-7細胞表層に含まれるタンパク質の解析方法の確立を行った。対数増殖期にある細菌を回収後、トリプシンによる部分消化および質量分析装置にて試料中に含まれるタンパク質を同定した。その際、懸濁溶液として、炭酸アンモニウムを含む溶液、スクロースを含む溶液、トレハロースを含む溶液の3種類を用いた。いずれも細胞質内由来のタンパク質が混入していたため、ネガティブコントロールを作製し、細胞表層由来と考えられるタンパク質を検出した。本方法にて、数十種のタンパク質が同定され、細胞表層提示機構の解明が期待される。 (2) ChiW細胞表層提示ドメイン融合タンパク質の解析。ChiWの細胞表層提示ドメインと他のタンパク質や酵素 (緑色蛍光タンパク質および細菌分泌型アミラーゼ)を連結したタンパク質発現ベクターを作製した。このベクターによりBrevibacillus菌を形質転換し、目的のタンパク質が表層に発現することを確認した。今後、P. FPU-7細胞表層提示法の汎用性を評価する。 (3) 細胞表層ChiW提示に関わるP. FPU-7タンパク質の機能解析。前年度までにキチンオリゴ糖結合タンパク質候補を見出し、大腸菌による組換えタンパク質を得た。本年度は、本タンパク質がキチンオリゴ糖と結合することを示差走査蛍光定量法により明らかにした。
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