研究課題/領域番号 |
16K08121
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
加藤 祐輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主席研究員 (60214409)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 生物学的封じ込め / 合成生物学 / 発現系 / 非天然アミノ酸 |
研究実績の概要 |
「非天然アミノ酸がないと生きられないようにする遺伝回路」を構築する上で、鍵となる技術である、非天然アミノ酸によって標的遺伝子の発現を厳密にON/OFF制御する翻訳スイッチの成熟化を行った。この翻訳スイッチの厳密化には、非天然アミノ酸非存在下(OFF状態)における漏えい翻訳の抑制が重要である。その漏えい翻訳は、翻訳スイッチの非天然アミノ酸特異性の不完全性に由来するスイッチ由来成分(LTaS)と、翻訳スイッチの性能とは無関係に生じるバックグラウンドリードスルーに由来する成分(LTaBR)から構成されている。昨年度に引き続きフィードバック回路によるLTaSの抑制の最適化を進めた。スイッチの構成要素である非天然アミノ酸特異的アミノアシルtRNA合成酵素およびアンバー終止コドン抑制性tRNAに対する転写および/もしくは翻訳レベルの多様なフィードバック回路を試験し、最大翻訳効率の損失が最小かつ漏えい翻訳が最大に抑制されるものを選抜した。さらに、標的遺伝子に対する調節配列を多重化してLTaBRを対策することにより、スイッチング性能を最大限引き上げた。その結果、モデル系として用いた3-ヨウ化-L-チロシン導入系において、翻訳スイッチのON/OFF比は、約300倍に向上した。その数値は、大腸菌において最も広く用いられている厳密な遺伝子特異的発現調節系であるPBAD/AraC系に匹敵した。さらに、この翻訳スイッチは、即応性、中間値出力に対応する調節性、および可逆性があり、人工遺伝回路への広い応用が期待できることが、示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に入り、非天然アミノ酸翻訳スイッチの技術開発に関する新しい知見が得られた。そのため、昨年度から、さらに期間を延長して、本技術の開発に注力した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、(1)エスケーパーを発生させない、(2)組換え遺伝子を伝播させない、の2点において、「非天然アミノ酸がないと生きられないようにする遺伝回路」を用いた生物学的封じ込め法の技術開発を進める。最終年度は、これまで開発した技術の集積化により、封じ込め回路の性能向上をはかり、その評価をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部の研究課題(翻訳スイッチの最適化)に集中的に注力したため、他の課題(回路の多重化など)に関する実施を延期した。次年度に、未実施課題について、所定の費用の使用を計画している。
|