研究課題/領域番号 |
16K08122
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研究機関 | 富山県衛生研究所 |
研究代表者 |
健名 智子 富山県衛生研究所, 化学部, 副主幹研究員 (60416089)
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研究分担者 |
小玉 修嗣 東海大学, 理学部, 教授 (70360807)
山本 敦 中部大学, 応用生物学部, 教授 (60360806)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 親水性化合物 / HPLC-UV法 / 金属イオン |
研究実績の概要 |
本研究課題では,親水性抗生物質を金属イオンに配位させることにより,高速液体クロマトグラフ法の既存の分離モードに配位能をプラスした新規な分離モードで分離分析する方法を開発し,その水環境中での環境動態を解析することを目的とする。 申請者らはこれまでに,親水性の高い金属キレート剤や有機酸類の金属イオンとの錯体を,逆相高速液体クロマトグラフ-紫外吸収検出(HPLC-UV)法により一斉かつ高感度に分析する方法を開発し,環境水や食品,家庭用品の分析に適用してきた。 親水性抗生物質は分子内にヒドロキシル基を多数持っていることから,研究初年度である本年度はヒドロキシル基を持つアルコール類を対象として分析法の開発を試みた。アルコール類は親水性が非常に高くまた特異的な吸収をほとんど持たないことから,これまでは親水性HILICモードまたは配位子交換モードで分離,示唆屈折率検出器や蒸発型光散乱検出器で分析されてきた。しかしながら,これら検出器に特異性はなく,充分な感度が得られていない。 炭素数4以上のポリオールについてモリブデン酸を用いた逆相モード(A)を用いて,また炭素数が1-3のアルコールについて銅イオンを用いた逆相モード(B)を用いて,HPLC-UV法による分離・検出について検討した。その結果,(A)では炭素数6以上の糖アルコール3種が逆相モードで,また炭素数4以上の糖アルコール6種がイオンペア/逆相モードで保持・分離され, (B)では炭素数が1-3のアルコール5種が逆相モードで保持・分離され,ともに紫外部吸収により検出できることが分かった。開発した分析法を,食品や家庭用品の分析に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紫外部に吸収を持たず,通常逆相カラムでは保持されないアルコール類が,移動相に金属イオンを加えることにより,金属イオンと配位した形で逆相カラムにより分離されること,また紫外部に吸収をもつようになることがわかった。これはアルコール類が,既存の逆相モードに配位能をプラスした,新規な分離モードで分離されたことを示しており,今後,この方法を親水性抗生物質の分析に適用することができると思われるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度のアルコール類の分析で得られた知識を活用し,親水性抗生物質について,金属イオンを添加した移動相を用いたHPLC-UV法による分析法を開発する。カナマイシン等アミノグルコシド系抗生物質は分子内にアミノ糖を含むが,アミノ糖もアルコール類と同様極性が高く発色団を持たないため,通常の逆相HPLC-UV法では分離・検出が難しい。 研究二年度である次年度は,まずアミノ糖について,金属イオンや移動相の種類,使用するカラムなどを変え,HPLC-UV法による分離条件を検討する。また,開発した分析法を多様な試料に適用するため,濃縮また妨害因子除去等の前処理法の検討を行う。 研究一・二年度の結果を踏まえ,研究三年度において,親水性抗生物質の新規な分析法の開発と水環境試料への適用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,アルコール類の既存の逆相モードに配位能をプラスした新規な分離モードでの分析法の開発を,種々のアプローチで取り組み,開発した方法を食品や家庭用品の分析に応用した。食品や家庭用品を分析する際の前処理法は,平成25~27年度の科学研究費基金・基盤研究(C)「金属イオンとの配位を利用した新規分析法の開発-親水性化合物の水環境中での動態解析」において開発した,食品分析における前処理法が適用できることが確認でき,前処理検討に用いる消耗品が手持ちのものでまかなえたため。 今年度は開発する分析法を多様な試料に適用するための濃縮また妨害因子除去等の前処理法の検討を行う計画であることから,今年度に繰り越した分と合わせて用いる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は開発する分析法を多様な試料に適用するための濃縮また妨害因子除去等の前処理法の検討を行う計画であることから,今年度に繰り越した分と合わせて用いる予定である。
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