研究課題/領域番号 |
16K08128
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
南山 泰宏 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00463266)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トキソウ / 無菌播種 / SSRマーカー / 遺伝的多様性 |
研究実績の概要 |
(1)トキソウの無菌播種条件の検討 授粉からの期間が50日以下と77日以上の未熟種子では発芽率が極めて低く,60日程度の未熟種子を用いた際に発芽率が最も高かった.また,H培地では発芽率は高いが発芽後の生育が悪く,1/2MS培地では発芽後の生育が良好であった.しかし,市販トキソウに比べて地黄湿地に自生するトキソウでは発芽率が極めて低いことから,28日間,45日間および56日間の低温処理(4℃)が発芽率に与える影響について調査した.その結果,28日間の低温処理により発芽までの日数が短縮され,発芽率が向上することが明らかとなった. (2)トキソウのSSRマーカーの開発 地黄湿地に自生するトキソウのゲノムDNA を抽出し,制限酵素AluⅠで消化したDNA断片を用いて,CAとGAの反復配列を持つSSR 濃縮ライブラリーを作成した.CAは80個,GAは70個のクローンについて塩基配列を解析した結果,5反復以上のSSRが含まれていた数は,CAで11個(13.8%),GAで21個(30.0%)であり,SSR含有率はGAが2倍以上であった.32個のSSRクローンのうち,23個のクローンから33組のプライマーセットを設計したところ,16のSSRマーカーを開発することができた.由来の異なるトキソウと近縁種のヤマトキソウを用いて16のSSRマーカーのDNA多型を調査した結果,12マーカーでDNA多型を確認し,対立遺伝子数は1~8,遺伝子多様度は0~0.83であった.また,6マーカーは同属別種のヤマトキソウでも利用可能であることがわかった.さらに,地黄湿地に自生するトキソウの個体間においても,12のSSRマーカーのうち5マーカーでDNA多型を示したことから,これらのSSRマーカーは地黄湿地の個体群内の遺伝的多様性の評価に利用可能であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地黄湿地に自生するトキソウでは,授粉後約60日目の未熟種子を低温処理することにより高い発芽率を得ることができた.この結果については,再現性を確認する必要がある.また,発芽後の培養植物の生育促進,順化や栽培方法については植物体の生育が緩慢であるので未検討である. 一方,SSRマーカーについては,地黄湿地に自生するトキソウの個体間において多型を示すマーカーが得られた.しかし,これはアクリルアミドゲル電気泳動の結果であるため,シーケンサーを用いて対立遺伝子数を明確にする必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の無菌播種により得られた培養植物を用いて,培養植物の生育促進,順化や栽培方法について条件を検討する.さらに地黄湿地に自生するトキソウについて人工授粉を行い,授粉後約60日目の未熟莢を採取し,30日間低温処理した後に無菌播種することで,系統保存を開始する.系統保存と同時並行で無菌播種法の有効性についても検証する. 一方,SSRマーカーの開発については,ゲノムDNAを消化する制限酵素の種類を変えて,さらに多くのSSRマーカーを開発し,対立遺伝子数の多いマーカーを選択して,人工授粉を行った地黄湿地に自生するトキソウからDNAを抽出し,遺伝的多様性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた「Qseq100フラグメントアナライザー」をデモ機として利用したところ,フラグメント解析に正確性を欠くことが判明したため,この機器の購入を見送り,代替品に変更したことで残額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
フラグメント解析については,外部に委託してシーケンサーを用いて行う計画をしているため,これに必要な蛍光プライマーの購入や委託経費として使用する計画である.
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