スギやヒノキの樹皮に親水性をもたせた特殊針葉樹皮改良材の特性を明らかにし、屋上緑化等の人工地盤上緑化の推進に資することを本研究は目的とした。2016年度には、基本特性である水分特性を把握するための各種試験を実施し、また、抗菌特性を調べるため、土壌中病原菌であるフザリウム菌とセルロース分解菌である腐朽菌を用いた試験を実施した。 2017年度には、特殊針葉樹皮改良材を土壌に用いた場合の、植物の塩害に対する抵抗性向上確認実験を実施した。特殊針葉樹皮改良材の良好な排水性によって、土中の塩分の除去効果が期待できたためである。また、併せて、実物の自動車の天井部を緑化した自動車車内の温熱環境の改善効果を確認する実験も実施した。 2018年度には、特殊針葉樹皮改良材を用いた底面滞水型の粗放型維持管理植栽技術検証実験を実施した。人工地盤上の緑化では潅水作業の軽減が課題となるが、土層の下部に水分を貯留することによって灌水頻度を下げることが期待できる。ただし、水の停滞は根腐れを招く懸念があるが、2016年度の実験では、特殊針葉樹皮改良材の高い抗菌性が確認され、土壌伝染性病原菌由来の病害に罹病しづらくなるという利点が想定された。このため、底面に水が滞留する形状の植木鉢と、底面に水抜き穴のある一般の植木鉢を用意し、それぞれ特殊針葉樹皮改良材・真砂土・砂の3種類の土壌を用いて、クヌギとヤマモモの苗木を植え、基本的には雨水のみといった条件下で、各々の樹木の樹勢を小型クロロフィル蛍光測定器によって評価した。乾燥に弱いクヌギの場合には、鉢底に滞水した状態で、約2か月経過した時点で、特殊針葉樹皮改良材の効果が有意に確認できた。しかしながら、乾燥に強いヤマモモの場合は、特殊針葉樹皮改良材の優位性は確認できなかった。これは、乾燥に強い樹種では、根茎が滞水することがかえってストレスになる可能性が推察された。
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