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2018 年度 実施状況報告書

天然ゴム生合成を包括的に制御する転写制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08138
研究機関東北大学

研究代表者

高橋 征司  東北大学, 工学研究科, 准教授 (90343061)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード天然ゴム / イソプレノイド / ラテックス / パラゴムノキ / 転写制御因子
研究実績の概要

天然ゴムは合成ゴムでは完全代替不可能な優れた物性を示し、タイヤ等のゴム工業製品に不可欠な天然材料であるため、遺伝子工学的手法による天然ゴム生産能の増強が期待されている。現在、天然ゴムは、パラゴムノキの乳管細胞の細胞質に相当するラテックスより生産されている。これまでに研究代表者らは世界に 先駆け天然ゴム生合成酵素およびその関連タンパク質群の同定に成功している。それらは乳管細胞内で特異的に発現しているが、その転写制御機構に関する知見はほとんど得られていなかった。本計画では、天然ゴム生合成関連タンパク質のプロモーター領域に結合する転写因子の探索と、パラゴムノキ培養細胞系をプラットフォームとした機能評価系構築により、乳管細胞において天然ゴム生合成を包括的に制御する転写制御機構を解明する。H29年度までに、ラテックスの平均化cDNAライブラリーより,ラテックス特異的に発現する天然ゴム生合成酵素およびその関連タンパク質群の5’上流プロモーター 領域に対し結合しうる転写制御因子として単離された1種類の推定転写因子の機能解析を進めた。また、遺伝子発現プロファイルをもとに、上記の候補とは別の転写制 御因子候補を単離することができた。H30年度は,これらの候補をパラゴムノキ培養細胞で過剰発現させ,その機能解明を行う予定となっており、形質転換効率の高いパラゴムノキ培養細胞系の誘導を進めていたが、培養環境に問題が発生し培養細胞系統が失われてしまった。現在までに懸濁細胞ラインの確立を再度試みているが、増殖効率の良いラインが得られておらず、2019年度まで研究期間を延長することとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

30年度は、H29年度までに絞り込まれた天然ゴムを包括的に制御しうる転写因子に関し、パラゴムノキ培養細胞で過剰発現させ、その機能解明を行う予定となっていた。そこで、形質転換ラインの作製を進めていたが、培養の環境に問題が発生し、培養細胞株が一度全て死滅してしまった。そこから新たに培養細胞株を起こすことにかなり時間がかかり、この度、研究期間を2019年度まで延長せざるを得なくなった。

今後の研究の推進方策

これまでに申請者らは、パラゴムノキの懸濁培養細胞ラインを得るため、天然ゴム生産・蓄積の場となる乳管細胞を含む葉柄の形成層からカルスを誘導する条件を確立している。その条件においては安定して増殖するカルスが得られるが、由来植物の生理的状態により、カルスを懸濁培養細胞化する際の増殖効率に差異が生じることが分かった。そこで、カルス誘導に用いる外植片として、生育ステージを細かく分けた葉柄を採取し、それらから誘導したカルスをもとに、培地条件、とりわけ植物ホルモン組成を検討し、懸濁培養細胞化を進める。
細胞増殖の観点で有望な系統が得られたのち、平成30年度までの研究において得られた候補転写因子を過剰発現させた培養細胞を作製し、天然ゴム生合成能を解析する。天然ゴム生合成能が確認された場合、Yeast two-hybrid system(Y2H)により、転写因子と相互作用するタンパク質を平均化ラテックスcDNAライブラリーよりスクリーニングする。単離された転写因子結合タンパク質の各組織別発現レベルを解析した後に、転写因子とその結合タンパク質を共発現できるバイナリーベクターを作製し、それをAgrobacterium感染法で培養細胞に導入する。過剰発現の効果を解析し、ラテックス内において天然ゴム生合成がどの様に制御されるかについて、モデルを構築するとともに、次の研究課題である代替生物における天然ゴム生合成に向けた方法論のデザインを行う。

次年度使用額が生じた理由

平成30年度は、平成29年度までに絞り込まれた天然ゴムを包括的に制御しうる転写因子に関し、パラゴムノキ培養細胞で過剰発現させ、その機能解明を行う予定となっていた。そこで、形質転換ラインの作製を進めていたが、培養の環境にトラ ブルが発生し、培養細胞株が一度全て死滅してしまった。そこから新たに培養細胞株を起こすことにかなり時間がかかり、この度、研究期間を2019年度まで延長せざるを得なくなった。2019年度は、当初平成30年度に実施予定であった研究の一部を実施するため、研究費は実験消耗品(遺伝子工学試薬・キット類、オリゴDNA合成、塩基配列受託解析、培地・一般化学試薬、理化学消耗品)の購入に充てるとともに、研究成果の論文投稿費用として使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Physical interactions among flavonoid enzymes in snapdragon and torenia reveal the diversity in the flavonoid metabolon organization of different plant species2018

    • 著者名/発表者名
      Fujino Naoto、Tenma Natsuki、Waki Toshiyuki、Ito Keisuke、Komatsuzaki Yuki、Sugiyama Keigo、Yamazaki Tatsuya、Yoshida Saori、Hatayama Masayoshi、Yamashita Satoshi、Tanaka Yoshikazu、Motohashi Reiko、Denessiouk Konstantin、Takahashi Seiji、Nakayama Toru
    • 雑誌名

      The Plant Journal

      巻: 94 ページ: 372~392

    • DOI

      10.1111/tpj.13864

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of chalcone reductase in the soybean isoflavone metabolon: identification of GmCHR5, which interacts with 2-hydroxyisoflavanone synthase2018

    • 著者名/発表者名
      Mameda Ryo、Waki Toshiyuki、Kawai Yosuke、Takahashi Seiji、Nakayama Toru
    • 雑誌名

      The Plant Journal

      巻: 96 ページ: 56~74

    • DOI

      10.1111/tpj.14014

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification and characterization of a novel bacterial β-glucosidase that is highly specific for the β-1,2-glucosidic linkage of sesaminol triglucoside2018

    • 著者名/発表者名
      Sakurai Akinori、Hongo Shuntaro、Nair Arun、Waki Toshiyuki、Oikawa Daiki、Nishio Takuma、Shimoyama Takefumi、Takahashi Seiji、Yamashita Satoshi、Nakayama Toru
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 82 ページ: 1518~1521

    • DOI

      10.1080/09168451.2018.1476123

    • 査読あり
  • [学会発表] ゴム粒子上に再構成した天然ゴム生合成マシナリによる多様なイソプレノイドポリマーの試験管内合成2019

    • 著者名/発表者名
      高橋 征司
    • 学会等名
      マテリアル・ファブリケーション・デザインセミナー/第 7 回日本セラミックス協会 MFD 研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] パラゴムノキのゴム粒子膜上への異種酵素の 導入による新規ポリイソプレノイド生合成2019

    • 著者名/発表者名
      高橋 征司
    • 学会等名
      日本農芸化学会2019年度大会
    • 招待講演
  • [学会発表] In vitro natural rubber biosynthesis by prenyltransferases introduced on rubber particles from Hevea brasiliensis2018

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Ishii, Miki Suenaga-Hiromori, Satoshi Yamashita, Fumihiro Yanbe, Toshiyuki Waki, Kouji Kojima, Haruhiko Yamaguchi, Yukino Miyagi-Inoue, Kazuhisa Fushihara, Toru Nakayama and Seiji Takahashi*
    • 学会等名
      The 23rd International Symposium on Plant Lipids
    • 国際学会
  • [学会発表] セイヨウトウキ由来テルペン合成酵素ファミリーの網羅的探索と機能解析2018

    • 著者名/発表者名
      茂木大介,末永美樹,菊池洋平,角掛 陽,童 佳麗,栗栖尚嗣, 青木裕一,新藤一敏,古谷昌弘,下山武文,和氣駿之,中山亨,○高橋征司
    • 学会等名
      第28回イソプレノイド研究会例会
  • [学会発表] ゴム粒子膜へのタンパク質導入系で明らかにされた天然ゴム生合成の分子機構2018

    • 著者名/発表者名
      高橋 征司
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [図書] バイオ実験を安全に行うために2018

    • 著者名/発表者名
      化学同人編集部 編、高橋征司(1章、共著)
    • 総ページ数
      140
    • 出版者
      化学同人
    • ISBN
      9784759819212
  • [図書] 基礎から学ぶ植物代謝生化学2018

    • 著者名/発表者名
      水谷 正治、士反 伸和、杉山 暁史/編、高橋 征司(3章、共著)
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-2090-6

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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