研究課題
天然ゴムはタイヤ等のゴム工業製品に不可欠な天然材料であるため、遺伝子工学的手法による天然ゴム生産能の増強が期待されている。現在、天然ゴムは、パラゴムノキのラテックス(乳管細胞の細胞質)より生産されている。これまでに同定された天然ゴム生合成酵素およびその関連タンパク質群は乳管細胞内で特異的に発現しているが、その転写制御機構に関する知見はほとんど得られていなかった。本計画では、天然ゴム生合成関連タンパク質のプロモーター領域に結合する転写因子の探索と、パラゴムノキ培養細胞系をプラットフォームとした機能評価系の構築により、乳管細胞において天然ゴム生合成を包括的に制御する転写制御機構を解明することを目的としている。ラテックスで特異的に発現する遺伝子群の5’上流プロモーター領域に結合するタンパク質を探索するため、yeast one-hybrid system (Y1H)によりラテックスの平均化cDNAライブラリーをスクリーニングし、一つの転写制御因子候補(ASR-like protein,ASRL)を単離した。より詳細なY1Hの結果、ASRLが結合するプロモータ領域が特定された。組織別遺伝子発現解析の結果、ASRLは主にラテックスで発現するタンパク質であることが示された。また、細胞内局在解析より、ASRLは核およびサイトゾルに存在することがわかった。また、ラテックスESTの解析から、ラテックス内で高発現している転写制御因子ホモログ候補が選抜された。2019年度は、それらの候補の機能解析を進め、bHLH型の転写制御因子がラテックス特異的遺伝子の5’上流プロモーター領域と結合することを明らかにした。これらの転写制御因子機能解析のため、パラゴムノキの培養細胞における誘導的発現系の構築を進めたが、種々の組織由来のカルスは誘導できたものの、期間内に形質転換懸濁細胞の取得には至らなかった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Nature Communications
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41467-020-14558-9
Annual Review of Biochemistry
巻: 89 ページ: -
10.1146/annurev-biochem-013118-111107
Frontiers in Plant Science
巻: 10 ページ: -
10.3389/fpls.2019.00821
The Plant Journal
巻: 101 ページ: 1221~1233
10.1111/tpj.14586
化学と生物
巻: 57 ページ: 593-595