核内倍加は一部の体細胞が核DNA量を倍加させる現象で、多くの被子植物に見られる。申請者はシロイヌナズナの倍加関連因子として知られるサイクリンA2 (CYCA2)が欠損すると、通常は核内倍加を起こさないイネが倍加を起こすことを明らかにした。シロイヌナズナとイネの間にはCYCA2に関連する異なる倍加制御のメカニズムがあると考えられるが、イネcyca2変異体は2Cと4Cの細胞だけからなることから(G2期の延長)、他の因子が8C以上の細胞が生じるのを抑制していることが示唆される。そこでイネ倍加変異体に加えて、環境因子など外的要因によって倍加細胞が誘導される現象を利用することによって核内倍加に関わる分子機構の解明を目指す。 (1)最初に単離したcyca2変異体では、CYCA2特異的なC末のドメインの末端に欠損が生じており、弱い変異形質を示している可能性があった。そこで、イネにおけるCYCA2の役割とA2特異的ドメインの機能を検証するために、CRISPR/Cas9 を用いてCYCA2の各ドメインに変異を導入した形質転換体の作出を試みた。その結果、N末ドメインに変異が導入されたカルスでは8C細胞が生じており、このことがカルスからの植物個体再生を阻害していると考えられた。 (2)イネの倍加抑制には複数の因子が関わっている可能性がある。そこで他のサイクリン遺伝子の変異体を解析したところ、核内倍加は確認されなかった。しかし、CRISPR/Cas9による変異の導入部位によっては、稔性が低下することが明らかになった。
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