研究課題/領域番号 |
16K08142
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 謙一郎 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90238105)
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研究分担者 |
中川 好秋 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80155689)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | benzoylphenylurea / ガン関連線維芽細胞(CAF) / 扁平上皮ガン / 細胞運動 / ガン細胞浸潤 / 昆虫表皮真皮細胞初代培養 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に記載した二つの課題(① エクダイソンに応答した昆虫表皮真皮細胞の形態変化の解析及び ② 脱皮に伴う昆虫表皮真皮細胞の形態変化に対するbenzoylphenylurea [BPU]の影響解析)に関して、ニカメイガ表皮真皮細胞初代培養系の確立を目指して培養条件の検討を行なった。無菌飼育したニカメイガ幼虫から表皮組織を剥離後(コラゲネース処理±)、種々のコーティング(コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル、Poly L-Lys)を施した培養プレート上で培養を行なった。培地としてGrace Medium + 15% FCSを用いた。さらに脱皮ホルモン(エクダイソン)の効果も検証した。いずれの場合も表皮真皮細胞の増殖は認められず、表皮真皮細胞培養系の確立には至らなかった。このため、研究実施計画に記した第二の研究目的であるBPUによるガン細胞転移・浸潤の抑制効果の検証とその分子機構の解明(当初の研究計画では平成29年度に実施予定)を先行させて実施した。ガン組織から調製したガン関連線維芽細胞(CAF)(ガン組織の微小環境に局在する活性化線維芽細胞)の細胞運動及びマトリゲルへの浸潤に対するBPUの効果を検証した。本研究の申請書に記載したBPU類縁体No.4 (BPU4) 及びNo.17(BPU17)は著明なCAFの細胞運動阻害効果(創傷治癒アッセイ)及びマトリゲルへの浸潤抑制効果を発揮した。さらに、CAFは複数の扁平上皮ガン細胞(SCC)が集塊を形成して移動するcollective cell invasionに重要な役割を果たすため、これに対するBPU4及びBPU17の効果を検証した。この結果、BPU4またはBPU17で前処理したCAFとSCCの株化細胞、A431細胞を混合して接種した場合にはA431細胞のcollective cell invasionは著しく抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記載したように、本研究の第一目的である以下の仮説(昆虫の脱皮過程初期に、表皮真皮細胞は扁平状から円柱状に変化する。この過程でEMT的変化が起こり、細胞運動が亢進するが、脱皮阻害剤BPUはこの変化を阻害し、脱皮を妨げる)の検証に必要なニカメイガ表皮真皮細胞培養系の確立を目指して研究を開始したが、予想に反してこの培養系の確立に時間を要することが判明した。このため、研究計画を若干変更し、平成29年度に予定していたBPUによるガン細胞転移・浸潤の抑制効果の検証とその分子機構の解明を先行させて実施した。この研究に関しては期待以上の成果を得ることができた。このため「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)BPUによるCAF機能阻害機構の解明に向けた研究:先ず、BPU標的因子の同定及びその機能解析を行う。このアプローチとしてO-NBDユニットを導入したBPUを合成し、これを用いてアフィニティーラベル(蛍光標識)したBPU標的タンパク質を可視化する方法を考えている。この手法により標的タンパク質を可視化して単離後、マススペクトルでタンパク質を同定する。その後、その因子の機能解析を行う。先ず、siRNAを介したノックダウンがCAFの運動能やマトリゲルへの浸潤能に及ぼす効果を検証する。 2)ニカメイガ表皮真皮細胞培養系の確立を目指した研究:昨年度に引き続き培養条件の検討を行う。培地にニカメイガ幼虫抽出液を添加した培養系等を考えている。また、剥離した表皮組織からの真皮細胞の分散方法についても改変を行い、最適条件の検討を行う。 3)動物実験によるBPUのガン細胞転移抑制能の評価:皮下組織において原発巣からの離脱・周辺組織への浸潤・血管内侵入能があるメラノーマBL6細胞を用いてBPUのin vivoでのガン細胞転移抑制効果を検証する。BL6細胞をマウスの足蹠に接種後、コントロール群とBPU投与群に分け一定期間内に肺転移したガン細胞のコロニー数を測定し転移抑制効果の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では遺伝子組換え生物(動物及び昆虫)を用いた解析を予定している。これらの解析には費用がかかるため、前年度の研究はできるだけ費用を節約して施行した。このため次年度使用額(B-A)欄が「0」より大きくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究計画では動物を用いた解析を予定している。このため、動物実験施設の使用料や実験動物購入に多くの費用がかかると考えている。繰り越した金額はこれらに当てる予定である。
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