研究課題/領域番号 |
16K08145
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石橋 宰 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70293214)
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研究分担者 |
池亀 美華 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70282986)
乾 隆 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (80352912)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / マイクロアレイ / ゲノム編集 / GPCR / オーファン受容体 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
7回膜貫通受容体であるGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、様々な臓器の病態生理に深く関わっているが、骨代謝におけるGPCRの役割については未知の部分が多い。我々はゲノムワイドトランスクリプトーム解析(RNA-seq)により、リガンド未知(オーファン)GPCRであるGpr137bの発現がマウス破骨細胞の分化・成熟に伴い顕著に亢進することを見出した。そこで、今年度はCRISPR/Cas9系を用いたゲノム編集によりGpr137b遺伝子をノックアウト(KO)した単球/マクロファージ様細胞株Raw264細胞クローンを作製し、本GPCRの破骨細胞における機能を解明することを目指した。 昨年度作製した、2つの異なるGpr137b-KO Raw264細胞クローンについて、破骨細胞分化誘導因子RANKL存在下で培養し、それぞれの破骨細胞分化能について比較解析を行った。定量的RT-PCR解析の結果、代表的破骨細胞マーカーである酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ、カテプシンKおよびMMP9のmRNA発現はいずれのKO細胞クローンにおいても顕著に低下していた。さらに、TRAPおよびMMP9についてはウェスタン解析も行い、蛋白質レベルでも発現が顕著に減少することが示された。 そこで、GPR137B遺伝子欠損株および正常細胞株をそれぞれRANKL存在下および非存在下で培養し、遺伝子アレイを用いて遺伝子発現の差異を網羅的に調べ、ネットワーク解析を行った。その結果、Gpr137bがRANKL受容体下流において、NFkBシグナルリングなど破骨細胞分化に決定的な役割を担うシグナル系を調節する分子であることが明らかとなり、その破骨細胞分化における役割を支持する結果となった。 さらに、現在Gpr137bが2型マクロファージ分化に関与する可能性についても解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、ゲノム編集によりGPR137B遺伝子が欠損したRaw264細胞を複数クローン作製することに成功し、さらにこれらの細胞を用いてGPR137Bが破骨細胞分化および2型マクロファージの分化に関わることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
GPR137B遺伝子欠損Raw264細胞株にGPR137B遺伝子を外来性に強制発現させ、減弱した破骨細胞分化能が回復することを確認するレスキュー実験については、現在解析の途中であり継続して行う。また、GPR137B遺伝子の欠損をタンパク質レベルで確認するためのウェスタン解析について、明瞭な結果を得るために実験条件のさらなる精査を遂行する。 加えて、当初の計画通り、本年度はケミカルバイオロジーの手法を用いてGpr137bのリガンド探索を実施する予定であり、現在準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ解析の受託が業者のキャンペーン期間中であったため当初の予定より安価であったこと、および各種研究試薬の値引きにより、残額が生じた。この額については、計画を延長して次年度も引き続き行うことになったウェスタン解析の試薬購入費用に充てる。
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