研究課題/領域番号 |
16K08149
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
征矢野 敬 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 准教授 (60532819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 根粒共生 / ミヤコグサ / 原基形成 |
研究実績の概要 |
本年度は、ミヤコグサLBD16とNF-Yとの相互作用解析、LjLBD16-1のノックアウト系統の作出とその表現型解析を行った。NF-Y はCCAAT-box結合タンパク質である。そのサブユニットをコードするLjNF-YA1とLjNF-YB1はLjLBD16-1と同様にNINの標的であることを既に報告しており、これらはすべて根粒原基で発現する。相互作用解析では先ずタバコの葉を用いたBiFCを行った。その結果、LjLBD16-1はLjNF-YB1と相互作用し、核からYFPの蛍光が検出された。さらにLjLBD16-1はLjNF-YB1の存在下においてLjNF-YA1と相互作用した。これらの相互作用はin vitroでのプルダウンアッセイによっても再現された。さらにLjLBD16-1とLjNF-Yサブユニットを同時に過剰発現したところ、それぞれの単独の過剰発現では観察されなかった側根密度の上昇や異所的な細胞分裂の誘導が起こったことから、LjLBD16-1がNF-Yと複合体を形成して側根形成や根粒原基における細胞分裂を正に制御するといった考え方を支持した。また、ゲノム編集によってLjlbd16-1変異体を作出したところ、複数系統で側根数が減少したことからもLjLBD16-1の側根原基発達への関与が示された。一方、Ljnf-ya1 Ljnf-yb1二重変異体では側根形成に影響はなく、側根の発達過程においてはLjLBD16-1との遺伝学的相互作用も見られなかった。根粒ではLjlbd16-1変異体単独の影響はほとんど見られなかったが、Ljnf-ya1あるいはLjnf-ya1 Ljnf-yb1で見られる根粒原基の発達の抑制をさらに亢進したことから、これらは根粒原基形成過程において遺伝学的に相互作用すると考えられた。LjLBD16-1は根粒の発達に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画したLjLBD16-1とNF-Yとの相互作用解析およびLjLBD16-1のノックアウト系統の表現型解析において一定の成果が得られた点において、実施計画に沿って概ね順調に研究が進展している。実験計画では人工転写因子を用いることで単一プロモーターによる多重発現系を計画したが、発現解析の結果、一部の遺伝子の発現が安定しなかった。そのため、今回は2種類の恒常的な過剰発現プロモーターを用いて3つの遺伝子をミヤコグサの根で共発現させた。これらの因子を皮層のみで発現させた場合に根粒原基様構造の形成を誘導できるかなどの詳細な機能解析には至らなかったが、LjLBD16-1とNF-Yの相互作用が検出できた点において目的の一つは達成された。
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今後の研究の推進方策 |
LjLBD16-1とNF-Yとの間で、物理的、遺伝学的相互作用が認められたことから、平成30年度ではこの相互作用が遺伝子発現に対してどのように作用しているのかを次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析などによって明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンス解析に用いるキット等の購入を平成30年度としたために未使用額が発生した。 平成30年度は、未使用額と平成30年度請求額を合わせて次世代シークエンスなどの研究遂行のために消耗品、旅費等に使用する予定である。
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