研究実績の概要 |
平成29年度は、LjLBD16-1とLjNF-YA1,LjNF-YB1の共発現が異所的な細胞分裂を誘導することを示したが、根粒原基の形成との関連が不明であった。平成30年度はこれらの因子をミヤコグサdaphne変異体で発現させることで、根粒原基の形成に関わることを示唆する結果が得られた。daphne変異体はNIN遺伝子の上流で転座が起きており、そのために皮層でのNINの発現が抑制されている。その結果として、表皮における根粒菌の感染イベントは起こるが原基が形成されない。LjNF-YA1とLjNF-YB1の共発現ではコントロールベクターを導入した場合と同様にdaphne変異体において根粒は形成されなかったが、LjLBD16-1とLjNF-YA1,LjNF-YB1を共発現させたところ、5%の植物で根粒が形成され、通常の根粒に見られるように根粒内に感染糸が網目状に広がっていた。さらに一部では内部共生が確認できたことから、LjLBD16-1とLjNF-YA1,LjNF-YB1が部分的にNINの機能を置換えたと考えられた。さらに、RNA-seqによって、LjLBD16-1の過剰発現、LjNF-YA1,LjNF-YB1の共発現、三者の共発現で遺伝子発現プロファイルを比較したところ、LjLBD16-1とLjNF-YA1,LjNF-YB1を同時に発現させた時にのみ発現が誘導される遺伝子群が確認された。in vitroでのpulldown実験やBiFCの結果から、LjLBD16-1とLjNF-YA1,LjNF-YB1は複合体を形成すると考えられる。RNA-seqの結果はこれらの因子が協調的に遺伝子発現を制御することを示しており、転写制御の観点からも複合体として作用することを支持すると考えられた。
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