研究実績の概要 |
我々は光合成によるバイオプラスチックのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)生合成のためにラン藻PCC6803をもちいて光条件による代謝遺伝子発現制御を進めている。ラン藻細胞内代謝系の遺伝子発現の単色光による制御とPHA生産に関わる影響を調べるために昨年度に引き続きLEDパネルを用いてラン藻の単色光照射後の遺伝子発現についてRNA-Seqを用いた解析を行った。さらにcph1cph2の光受容体変異体を用いて赤色光条件下での遺伝子発現と野生株と比較する実験を行った。結果を安定させる条件として暗処理3時間、単色光処理1時間を行い、3回の繰り返しを行ない、再現性良い結果を得ることができた。単色光は、ラン藻の光受容体遺伝子の吸収スペクトルである紫外光、青色光、緑色光、橙色光、赤色光、遠赤色光を用いた。単色光による光受容体遺伝子発現については、それぞれの受容体の吸収光波長による発現の制御が観察された。 一方解糖系について3回繰り返し実験を行ったところ、解糖系に関わる9つの遺伝子のうち8つの遺伝子が暗条件で他の単色光条件に比較して発現の減少が観察され、この経路が明条件で制御されていることが示唆された。pfk1遺伝子は暗所で他の単色光条件に比較して発現上昇が観察された。TCA回路は、クエン酸からオキザロ酢酸の回路を構成する7つの酵素遺伝子について調べたところ5つの遺伝子が暗所で他の単色光に比較して発現上昇が見られ、暗条件での制御が示唆された。ラン藻のPHA合成経路遺伝子は、PHA重合酵素のphbC遺伝子が、暗所および遠赤色光で発現の誘導が見られ、光合成で合成された過剰なアセチルCoAから暗条件でのPHA重合促進に関わるものと考えられた。さらにラン藻の代謝遺伝子光制御は、野生株とcph1, cph2の光受容体変異ラン藻を用いてこれらの受容体が関わる発現制御解析を進めた。
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