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2016 年度 実施状況報告書

ペア抵抗性蛋白質複合体を構成するRRS1の機能解析と複数の病原体認識機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08152
研究機関岡山県農林水産総合センター生物科学研究所

研究代表者

鳴坂 真理  岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 流動研究員 (80376847)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード抵抗性蛋白質 / 植物免疫 / アブラナ科野菜類炭疽病菌 / 生物間相互作用 / アミノ酸置換 / RRS1 / シロイヌナズナ
研究実績の概要

(1) RRS1に特徴的なモチーフの機能解析
これまでにRRS1のロイシンジッパーモチーフに変異を導入すると恒常的に抵抗性が発現することを明らかにした。また、Noutoshiら(2005)によりWRKYモチーフへのアミノ酸付加は植物体のわい化を引き起こすことが報告されている。本研究においても、WRKYモチーフの改変は恒常的に抵抗性が発現することを明らかにした。さらに、RRS1に存在するこのような数種のモチーフがデュアル抵抗性蛋白質システムをどのように制御しているのかを明らかにするために、これらモチーフに変異を導入したコンストラクトを作製した。その結果、あるモチーフにアミノ酸置換を導入したシロイヌナズナWs-2変異体はアブラナ科野菜類炭疽病菌に対して抵抗性から感受性に変化した。
(2) RRS1-Rに特徴的なC末端領域の機能解析
抵抗性蛋白質RRS1には炭疽病、斑葉細菌病、青枯病に抵抗性を示す生態型(Ws-2)由来のRRS1-Rと、炭疽病、青枯病に感受性、斑葉細菌病にのみ抵抗性を示す生態型(Col-0)由来のRRS1-Sが存在する。両者間の違いを明らかにすることで、抵抗性誘導機構を明らかにすることを試みた。
① C末端領域への変異導入...複数の病原体に対して抵抗性を示すシロイヌナズナ生態型Ws-2の抵抗性蛋白質RRS1-Rに特徴的なC末端領域にアミノ酸置換を導入し、これらコンストラクトを、シロイヌナズナRRS1欠損変異体rrs1-1に導入した。来年度はこれらの特徴付けを行う。
②RRS1と相互作用する因子の探索...標識ペプチドを融合した抵抗性蛋白質RRS1を用い、免疫沈降などにより相互作用する因子の同定を試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

“デュアル抵抗性蛋白質システム”は遺伝子対遺伝子説、ガード説に次ぐ第3のモデルであるIntegrated decoy説として国際的にも高い評価を受けており、国際的に激しい研究の競争が繰り広げられている。RRS1はTIR領域、p-loopモチーフ、ロイシンリッチリピート(LRR)配列といった抵抗性蛋白質特有のモチーフに加えて、遺伝子発現制御に関わるWRKY、ロイシンジッパー(LZ)、核移行シグナル(NLS)といった特徴的なモチーフを有しており、私たちはRRS1が複数の異なる病原体の攻撃を認識し、かつ、本システムにおける抵抗性発現の制御に関わっていると考えている。本研究により、あるモチーフに変異を導入することで、病原体に対する感受度に変化が認められたことから、重要なモチーフの一つを特定できた。さらに、H29年度の解析に向けた変異体ラブラリーの作製も完了した。以上の通り、研究は順調に進捗しており、科学的に重要な知見も得られたことから評価区分を(1)とした。

今後の研究の推進方策

(1) RRS1に特徴的なモチーフの機能解析…モチーフに変異を導入したシロイヌナズナを用い複数の病原体に対する感受度の変化を解析することで、モチーフの役割を明らかにする。同時にベンサミアーナタバコを用いた一過的発現解析により、蛋白質間相互作用を明らかにする。
(2) RRS1-Rに特徴的なC末端領域の機能解析
① 変異C末端領域を導入した植物の表現型解析...前年度に作製した変異C末端領域を有するシロイヌナズナ形質転換体について、炭疽病菌に対する感受度の変化を解析することで、抵抗性発現に関わる領域を特定する。さらに、ベンサミアーナタバコまたはタバコを用いた一過的発現解析を遂行するため、35Sオメガ配列を用いた過剰発現コンストラクトを作製し、過敏感細胞死を指標として病原体認識および抵抗性発現に重要な部位(アミノ酸)を特定する。
② RRS1と相互作用する因子の探索...前年度に引き続き、RRS1およびそのC末端領域と相互作用する因子を同定する。取得した因子の変異体を取得し、病原体に対する表現型を解析することで、その機能を明らかにする。
(3) RRS1のRNA転写バリアントを特定し、抵抗性発現に関する機能を解明
デュアル抵抗性蛋白質システムを構成するRPS4は選択的スプライシングを生じ、スプライスバリアント(splice variant)と呼ばれる変異タンパク質を生成することが知られている。また、ストレス時に転写開始点が変化する遺伝子も知られている。複数の病原体の認識に関わるRRS1についても、RNA転写バリアントがあると予想でき、これらが抵抗性発現に関与すると考える。そこで、炭疽病菌感染時のRNA転写バリアントを明らかにするため、全遺伝子の転写開始点を解析できるCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)解析を試みる。

次年度使用額が生じた理由

RRS1の変異体やシロイヌナズナのエコタイプ間の差異を明らかにするためSNP解析を行う。リアルタイムPCRを用いたSNP解析は、迅速な解析が可能であり、効率よく本解析を遂行できる。そこで、リアルタイムPCR用に開発された最新の解析ソフトを必要とするため、H28年度の予算を次年度に繰り越し、H29年度予算と合算して解析ソフトの購入を計画したため。

次年度使用額の使用計画

4月早々にSNP解析ソフト(バイオラッド・プレシジョンメルトソフト54万円)を購入する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Analyses of natural variation indicates that the absence of RPS4/RRS1 and amino acid change in RPS4 cause loss of their functions and resistance to pathogens.2017

    • 著者名/発表者名
      Narusaka, M., Iuchi, S. and Narusaka, Y.
    • 雑誌名

      Plant Signaling & Behavior

      巻: 12 ページ: e1293218

    • DOI

      10.1080/15592324.2017.1293218

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Draft genome assembly of Colletotrichum chlorophyti, a pathogen of herbaceous plants.2017

    • 著者名/発表者名
      Gan P, Narusaka M, Tsushima A, Narusaka Y, Takano Y, Shirasu K
    • 雑誌名

      Genome Announcements

      巻: 5 ページ: e01733-16

    • DOI

      10.1128/genomeA.01733-16

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genus-wide comparative genome analyses of Colletotrichum species reveal specific gene family losses and gains during adaptation to specific infection lifestyles2016

    • 著者名/発表者名
      Gan, P., Narusaka, M., Kumakura, N., Tsushima, A., Takano, Y., Narusaka, Y. and Shirasu, K.
    • 雑誌名

      Genome Biology and Evolution

      巻: 8 ページ: 1467-1481

    • DOI

      10.1093/gbe/evw089

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A novel class of conserved effectors with ribonuclease domains is required for virulence of phytopathogenic Colletotrichum fungi on plants.2017

    • 著者名/発表者名
      Kumakura, N., Singkaravanit-Ogawa, S., Gan, P., Tsushima, A., Narusaka, M., Narusaka, Y., Takano, Y. and Shirasu, K.
    • 学会等名
      第58回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-18
  • [学会発表] Comparative genomics reveals structural variations in the genome of the plant pathogenic fungus Colletotrichum higginsianum.2017

    • 著者名/発表者名
      Tsushima, A., Gan, P., Kumakura, N., Narusaka, M., Takano, Y., Narusaka, Y. and Shirasu, K.
    • 学会等名
      29th Fungal Genetics Conference
    • 発表場所
      カリフォルニア
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-19
    • 国際学会
  • [学会発表] A novel class of conserved effectors with ribonuclease domains is required for virulence of phytopathogenic Colletotrichum fungi on plants.2016

    • 著者名/発表者名
      Kumakura, N., Ogawa, S., Gan, P., Tsushima, A., Narusaka, M., Narusaka, Y., Takano, Y. and Shirasu, K.
    • 学会等名
      Latest Advances in Plant Development & Environmental Response
    • 発表場所
      淡路
    • 年月日
      2016-11-29 – 2016-12-02
    • 国際学会
  • [学会発表] アブラナ科炭疽病菌におけるエフェクター候補遺伝子の取得とその機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      鳴坂 真理、Pamela Gan、津島 綾子、熊倉 直祐、白須 賢、高野 義孝、久保 康之、白石 友紀、鳴坂 義弘
    • 学会等名
      平成28年度日本植物病理学会関西部会
    • 発表場所
      静岡
    • 年月日
      2016-09-29 – 2016-09-30
  • [学会発表] デュアル抵抗性蛋白質を構成するRPS4のアミノ酸置換による抵抗性喪失2016

    • 著者名/発表者名
      鳴坂 義弘、井内 敦子、井内 聖、鳴坂 真理
    • 学会等名
      平成28年度日本植物病理学会関西部会
    • 発表場所
      静岡
    • 年月日
      2016-09-29 – 2016-09-30
  • [学会発表] デュアル抵抗性蛋白質システムを構成する抵抗性蛋白質RRS1の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      鳴坂真理、白須賢、豊田和弘、高野義孝、白石友紀、鳴坂義弘
    • 学会等名
      第34回日本植物細胞分子生物学会
    • 発表場所
      上田
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] Colletotrichum higginsianumの新規ゲノム解読とエフェクター候補遺伝子の解析2016

    • 著者名/発表者名
      津島綾子、Pamela Gan、熊倉直祐、鳴坂真理、高野義孝、鳴坂義弘、白須 賢
    • 学会等名
      平成28年度植物感染生理談話会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2016-08-10 – 2016-08-12
  • [学会発表] Comparative genomics of Colletotrichum fungi reveals lifestyle-adapted fungal gene gain/loss andn potential virulence-associated genes.2016

    • 著者名/発表者名
      Gan, P., Narusaka, M., Kumakura, N., Tsushima, A., Hiroyama, R., Takano, Y., Narusaka, Y. and Shirasu, K.
    • 学会等名
      13th European Conference on Fungal Genetics
    • 発表場所
      パリ
    • 年月日
      2016-04-03 – 2016-04-06
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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