研究課題/領域番号 |
16K08153
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鬼塚 和光 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00707961)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロタキサン / 環状核酸 / DNA / RNA / 翻訳 / クリック反応 |
研究実績の概要 |
ロタキサンやカテナンのような環状分子を中心とするインターロック型の分子構造体は、そのユニークな構造や性質のため、様々な研究が試みられている。本研究では独自に開発した化学修飾環状核酸を利用して新しい機能創出を目指している。 本研究目的の一つである、核酸配列内部で環状構造(擬ロタキサン)を形成する技術を利用した翻訳制御機能に関して、昨年度は擬ロタキサン形成オリゴDNA(prfODN)を用いて翻訳阻害効果を調査したが、試したprfODNに翻訳阻害効果は観測されなかった。そこで本年度は、細胞内mRNAに対して擬ロタキサン構造を形成可能かを検討するため、擬ロタキサン構造体を構築したときに、蛍光を発する新しいprfODNの開発に着手した。3-azido-coumarin誘導体は、そのアジド基がクリック反応によりトリアゾール基となることで強い蛍光を示す事が報告されている。そこで、今までの脂肪族アジド基をこの3-azido-coumarin誘導体に置き換えた新しいprfODNを設計した。また、prfODN1に使用する歪みアルキンとして、従来のDBCOに加え、高い反応特異性を有するDACN (4,8-diazacyclononyne)を新たに用いた。合成したprfODNを用いて、標的RNAに対する擬ロタキサン形成反応を行い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した。その結果、歪みアルキンとしてDACNを用いたときに、最大1時間で70%の収率で擬ロタキサン形成反応が進行した。さらに、反応前後で蛍光測定を行ったところ、反応が進行した時にのみ強い蛍光が観測された。擬ロタキサン形成反応ではクリック反応がSN2反応より遅いことがわかっていることから、この結果は擬ロタキサン構造を形成した時にはじめて蛍光を発していることを示唆している。現在、細胞内での実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で、標的RNAに対して擬ロタキサン構造を形成し、さらにその構造体を形成したときに蛍光を発する新しいタイプのRNA蛍光ラベル化の開発に成功した。この機能性核酸を用いることで、本研究がさらに進むことが期待できるため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。最終年度には、これまで得られてきた知見を組み合わせ、最終目標の達成に向けて研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度翻訳阻害効果が観測されなかった原因がmRNAに対して擬ロタキサン構造を形成できていないためなのか、または形成できているがリボソームのヘリケース活性のため翻訳が阻害されないのかに関して現在のところ明確にできていない。本年度開発した、擬ロタキサン構造を形成したときのみ蛍光を発する機能性核酸を用いて、細胞内における擬ロタキサン構造形成の証明、さらにはその構造体の翻訳過程に及ぼす影響を明確にしていく予定である。また、これらの開発過程でRNA切断機能をもつ機能性核酸も見出しており、その機能を用いた翻訳阻害法への展開も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)1年目に、機能性核酸合成の試薬に関して、条件を検討することで最小量の試薬で様々な誘導体を合成することに成功したため、計画より大幅なコスト削減に成功した。その分の予算が現在も残っている状況である。 (使用計画)一年目の研究から生まれた課題、mRNAに対して擬ロタキサン構造を形成可能か、を解決するために新たな機能評価を必要とするため、削減できた予算を利用して最終目的達成のため実験を追加する予定である。また、最終年度には様々な生物系の実験を予定しており、これまで研究室で行っていないアッセイ系の立ち上げ等も行うため、削減できた予算も加えて、最適なアッセイ系を速やかに確立し、最終目標に向けて実験を進めていく予定である。
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