研究課題/領域番号 |
16K08154
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原田 真至 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (10451759)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不斉触媒 / らせん状変形 / ニッケル触媒 / ヒドロカルバゾール / 銅触媒 / インデノール |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、『可視化された触媒構造』を基盤とした新規の触媒的不斉環形成反応の開発を目指して研究を行っている。まず、申請者の開発した可視化された新規二核ニッケル触媒の汎用性を実証すべく、α-ケトエステル類を用いた触媒的不斉反応の開発に取り組んだ。α-ケトエステル構造を有するジエノフィルの不斉Diels-Alder(DA)反応において、収率、不斉収率ともに中程度の結果が得られることを見出したが、各種反応条件の詳細な検討にも関わらずそれ以上の結果の改善には至らなかった。そこでα-ケトエステル構造のチューニングを行ったところ、α-ケト"チオ"エステルを用いた際に、反応性を損なうこと無く立体選択性が向上することを見出した。本実績概要執筆時現在で、収率91%, 不斉収率88% eeにて目的のDA付加体を得ている。本DA付加体は含窒素光学活性三環性骨格(キラルヒドロカルバゾール)であり、多くの天然物や生物活性化合物の部分構造としてよく見られる化学構造である。そのため、本付加体を中間体とする合成化学的有用性に興味が持たれる。 上述の結果を元に、α-ケトエステル構造を持つ新規基質を別途合成し、基質分子全体のらせん状変形を利用した新規不斉環化反応の開発に取り組んだ。種々検討の結果、α-ケトエステルを持つスチレン誘導体を用いたPrins環化を触媒的に進行させる方法論の開発に成功した。特に、キラル銅触媒を用いることで、収率95%, 不斉収率94% eeにて目的の環化体であるキラルインデノールを得た。なお、前述のDA反応の知見を元にα-ケトチオエステルを持つスチレン誘導体の基質合成を試行したところ、チオエステル部位の反応性の高さから基質合成途中で分解してしまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者独自の二核ニッケル錯体を用いた不斉Diels-Alder反応の開発、および、基質分子のらせん状変形を基盤とする不斉Prins環化の開発に成功したことは、当初の計画以上の進展である。両反応共に未だ検討すべき反応条件が残されており、反応性・収率・不斉収率の更なる向上の可能性を秘めていると考えている。 一方で、ニッケル錯体とDiels-Alder反応基質との複合体の結晶化には成功していない。同様に、Prins環化の触媒と基質の複合体の結晶化にも成功していない。それらの構造情報は、触媒開発研究の加速と革新のために重要な知見となるため、今後も結晶化条件を広範に検討していくことが急務であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
更なる反応条件精査とともに、基質一般性の検討、反応生成物の官能基変換・有用骨格への変換検討を進める。また同時に、錯体構造の解明に向けて、触媒溶液、もしくは触媒と基質の混合溶液に対する添加剤の検討を行う。
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