アクアミリン型インドールアルカロイドは、コリナンテタイプアルカロイドから7位-16位間で結合が生じることにより生合成されると考えられている。本研究で既にアクアミリン型インドールアルカロイドの形式全合成を達成しているが、別の合成法として、生合成経路を模擬した合成を試みた。コリナンテ型インドールアルカロイドとして、ガイソシジンを選択した。市販のトリプタミンより文献の方法を参考に中間体へと導いた後、ニッケルを用いた環化反応によりガイソシジンを合成した。ガイソシジンより、レギッツジアゾ転移反応を用いてジアゾ化合物とした。ジアゾ化合物に対して、金属カルベノイドを発生させる条件を種々検討したが、目的のアクアミリン骨格を有する化合物は得られなかった。望む反応が進行しない理由として、基質の窒素原子が分子内水素結合により安定化され、反応点が近づかないためと考察した。そこで窒素原子にホウ素を結合させることにより、分子内水素結合を防ぐことが可能と考えた。窒素原子をホウ素化した基質を用いて環化反応を検討したところ、目的の7位-16位間での結合は生成しなかったが、1位窒素-16位間での結合が生成した環化体が得られた。得られた環化体から窒素-ホウ素結合を切断することによりpleiocarpamineを、続いてエステルを還元することによりnormavacurineを、さらに4位窒素をメチル化することによりC-mavacurineの全合成を達成した。本合成は、生合成経路を模擬した短段階での全合成であり、非常に意義深い。 研究期間を通じて、他にも複雑なインドールアルカロイドを多数合成することができた。本研究は複雑なインドールアルカロイド類の合成に非常に有用であり、さらに多くの誘導体合成等に展開可能と考えている。
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