研究実績の概要 |
ジアゾ化合物の金属触媒による金属カルベノイド反応は「誰もが使える」反応で,かつ「環境調和型」である数少ない反応の一つであるが,その有機合成への利用は限られていた。そこで,金属カルベノイド反応のさらなる利用拡大を目指し,回収・再利用が容易な新触ロジウム媒創製と,新規金属カルベノイド反応の開発,さらに天然物合成への応用を目的として本研究を開始した。 新触ロジウム媒創製:ロジウム触媒の磁性鉄ナノ粒子であるマグネタイトへの担持を検討している。 新規金属カルベノイド反応の開発:金属カルベノイドを用いる連続的ロジウム触媒C-Hアミノ化続くアルキル化,還元による立体選択的四置換,三置換炭素構築反応,立体選択的ロジウム触媒オキソニウムイリド形成―[2,3]-転位反応,7-アミノスルホニルオキシ-2-ジアゾ-5-メタリルオキシ-3-オキソヘプタン酸メチルのワンポットロジウム触媒O-イリド形成―[2,3]-転位反応,2-ジアゾ-3-オキソ-5-シリルオキシアルカン酸メチルの立体選択的ロジウム触媒C-H挿入反応―還元反応を開発した。 天然物合成への応用:免疫抑制活性ミリオシン,ミセステリシンD ,スフィンゴフンギンE,デオキシスフィンゴフンギンFならびにタニコリドおよびその類縁体の全合成を達成した。異常アミノ酸aiha-Aおよびaiha-Bの部分構造の選択的合成に成功した。アフリカ睡眠病やシャーガス病などのトリパノソーマ属原虫が原因となる感染症(トリパノソーマ症)の治療薬候補として期待されている抗トリパノソーママクロリドactinoallolide A のフラノン部の合成をおこなった。さらに最近生薬車前子が抗ガン薬の副作用である末梢神経障害の改善に効果があり,その活性成分として見出されたシクロペンタン化合物およびその類縁体合成をおこなった。
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