前年度に見出したホウ素触媒と用いる分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロアリル化反応と分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応の反応機構について、さらに詳細に検討を行った。その結果、分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロアリル化反応では、B(C6F5)3・nH2Oがアリルシランによって脱水され無水物となり、B(C6F5)3(無水物)とアリルシランは、お互いに反応しないことが明らかとなった。このことからも、B(C6F5)3は、アルキンを高選択的に活性化することが示された。また、分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応では、反応系中で生成することが確認されたH+[NCB(C6F5)3]-の調製法を確立し、その反応性について調べた。その結果H+[NCB(C6F5)3]-が本反応の触媒活性種であることを示唆する結果が得られた。 本年度は、さらにホウ素触媒による分子内ヒドロアミノ化/ヒドロアリル化反応および分子内ヒドロアミノ化/ヒドロシアノ化反応の開発にも成功した。これらの反応は、分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロ官能基化反応の最適条件と同様の条件下では、効率的にはしなかった。分子内ヒドロアミノ化/ヒドロアリル化反応では、求核剤であるアリルシランとプロトン源の直接的な反応によってそれらが消費されてしまうことが問題となったが、嵩高いフェノールをプロトン源とすることによって、目的の反応は効率的に進行した。分子内ヒドロアミノ化/ヒドロシアノ化反応では、分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応とはことなり、分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応の触媒活性種であることが示唆されているH+[NCB(C6F5)3]-の形成を抑制することが、効率的反応の実現には重要であることが示唆された。
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