研究課題/領域番号 |
16K08163
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不斉反応 / 不斉触媒 / ドミノ反応 / ハイスループット評価 / 液晶 / ヘリセン / 発色団 / 色素 |
研究実績の概要 |
化学反応を目視でトレースする評価法を確立しコンビナトリアル法と組み合わせることで目的とする触媒的不斉ドミノ反応の条件を迅速に見つけ出す手法の開発を目指した。先行研究として、1) 反応基質の化学反応による構造変化に基づく蛍光強度を利用する解析方法や、2) 光学活性体の円偏光二色性を利用する高速大量スクリーニング法が開発されている。しかしながら、1) の手法では、不斉収率を決定できない。2) の手法は、ドミノ反応のような多段階反応の経時変化や、複数のキラル化合物が混在する試料は解析できない。これまでの不斉収率を液晶の色で決定する方法は、液晶ユニットが反応基質に直接炭素-炭素結合を介して導入されているため汎用性に乏しい。そこで、反応終了後に除去可能、かつ共役π電子系発色団やアゾ色素化合物等の助色団を導入した保護基をデザイン・合成した。反応中の基質の構造変換を色調変化で確認することが可能か精査した。最適条件を絞り込み、キラル生成物をコレステリック液晶の添加剤として用いることで、可視光領域の光反射層の色調から目視での不斉収率決定試験を行った。aza-森田-Baylis-Hillman(aza-MBH)において、アゾ系発色団を導入した基質を合成・評価したところ、開始時は朱色を呈するものの、約30%の目的付加体が生成した時点から、反応溶液の色に変化が見られ、完結時には黒色となることを確認した。アゾ系以外の発色団として紫外可視光波長パターン変化による色調変化を志向した脱着容易なポリアロマティク保護基を導入した求核試薬を用いると、約70%の目的付加体が生成した時点から、反応溶液は無色から黄色を呈した。有機分子不斉触媒を用いた場合には、エナンチオ選択性は低いものの発色団に阻害される事無く反応が進行することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学反応を目視でトレースする評価法開発は、反応基質の変換率と、生成物の収率に関して目算できることが確認されつつあるものの、エナンチオ選択性の迅速評価については未だ問題が多い。現在、動的ヘリシティーを導入した光学的情報が増幅可能な保護基について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
化学反応を目視(色の変化)でモニタリングする解析・評価法の開発に向けて、今後は、1)動的ヘリシティーを導入した光学的情報が増幅可能な保護基を用いた不斉反応、2)得られたキラル生成物と市販の液晶化合物からのコレステリック液晶作成、3)可視光領域の光反射層の目視観察による不斉収率の高低判断、以上3つについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の化学反応を目視でトレースする評価法開発は、反応基質の変換率と、生成物の収率に関して目算できることが確認されつつあるものの、エナンチオ選択性の迅速評価については未だ問題が多い。本問題を解決するために動的ヘリシティーを導入した光学的情報を増幅可能な保護基の開発研究を行った。その過程でカルバゾールを単位ユニットとして持つ動的ヘリシティー化合物が飛躍的に性能を向上させることを見出した。研究遂行上、この現象の本質を見極めるために、当初の予算使用予定を変更した結果、次年度に新たな化学薬品の購入、関連学会での情報収集、金属廃液処理費が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
1)動的ヘリシティーを導入した光学的情報が増幅可能な保護基を用いた不斉反応、2)得られたキラル生成物と市販の液晶化合物からのコレステリック液晶作成、3)可視光領域の光反射層の目視観察による不斉収率の純度判定、以上3つについて追加検討を行うため、カルバゾール合成用の遷移金属触媒の購入(4~8月)、日本液晶学会討論会への情報収集参加(9月)、及び実験廃液処理(12月)に研究費を使用する。
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