研究課題/領域番号 |
16K08168
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小谷 俊介 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (50551280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬学 / 有機化学 / 不斉触媒 / 創薬科学 / アルドール反応 / プロセス化学 / ホスフィンオキシド / 高配位ケイ素複合体 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる平成29年度では、平成28年度に見出したカルボン酸の活性化に関する具体的な検討を進めた。本反応は十分な化学収率を得ることに成功していたものの、ジアステレオ選択性ならびにエナンチオ選択性は中程度であり、選択性に改善の余地を残していた。これらの問題を解決すべく、触媒、アミン、反応条件など種々の条件検討を行った結果、9つのエントリーにおいて90%eeを超える立体選択性を獲得することに成功した(収率 62-84%、dr 81/19-92/8, 72-92% ee)。カルボン酸の触媒的な不斉アルドール反応を高選択的に実現したものはないことから、本反応の開発は、本研究課題における重要な研究成果となると考えている。さらに、四塩化ケイ素がカルボン酸と形成するトリクロロシリルカルボキシラートは,エステルやアミド、ケトンよりもシリルエノールエーテル化が速やかに進行することを見出し、カルボキシ基で選択的にアルドール反応が進行することを明らかとした。また、この化学選択性を利用することで、これまで合成に工程数を要していた二環性化合物を得ることにも成功している。具体的にケトカルボン酸のアルドール反応を行うと、カルボキシ基でアルドール反応が進行した後、水酸基のカルボニル基への付加と続く環化を経て一挙に二環性ラクトンを与える連続反応を見出している。この他に、平成28年度に推し進めていたトリクロロシリル基を利用した連続反応に関する研究内容を公表することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究成果を研究計画に従い、着実に研究を進めることができているだけでなく、論文発表として研究成果を公表できている。さらに、トリクロロシリルカルボキシラートが化学選択的にケイ素複合体に活性化されることを見出し、より付加価値の高い反応へと研究展開することに成功しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、昨年度から引き続き、当初予定のとおり実施されており、引き続き研究実施計画に従い、研究活動を継続していく。 平成29年度は、連続活性化を基軸とした四不斉中心の構築を実現する二重アルドール反応や、環化反応を組み合わせたピラノン合成の論文化に成功し、トリクロロシリル基を利用した連続分子変換法を確立できたと考えている。最終年度に当たる平成30年度は、トリクロロシリル基を利用したカルボン酸の活性化を基軸として研究を展開し、すでに見出している連続反応などをより実用的なものにすることを目指す。
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