本研究課題の最終年度にあたる平成30年度は、昨年度見出したカルボン酸の触媒的不斉アルドール反応を中心に反応開発を行った。まず、高い立体選択性が得られることを明らかとした本反応の基質適用範囲について確認を行った。その結果、20のエントリーで85%以上、最大で96%のエナンチオ選択性を得ることに成功した。特にこれまで反応性を得ることが難しかった脂肪族アルデヒドを本反応の基質としても良好な化学収率および光学収率にて目的物が得られることがわかった。本研究内容はIFが12を超える学術誌にて受理され、本研究課題の有用性を広く周知することができたと考えている。さらに、反応機構に関する調査を実施した結果、本反応には四塩化ケイ素2分子が関与して進行していることを明らかとした。さらに、化学選択性に関する調査を行ったところ、本反応条件は一般に活性化しづらいカルボン酸官能基を優先して活性化できることがわかった。この特異な官能基選択性を利用して、連続的な分子内環化を行うことで、通常では得られない二環性構造を有する環状ラクトンを立体選択的に得ることにも成功した。通常とは異なるユニークな反応性は、本研究課題の有用性・独自性を示すものとなると考えている。今後は本研究課題で得られた成果を利用した天然物の効率的な合成へと展開する予定である。また、独自に見出した四塩化ケイ素による活性法を駆使することで、不斉共役付加反応(最大で83%ee)やケトンとのアルドール反応(最大で88%ee)などが進行することを明らかとしており、本研究課題を基軸として新たな研究展開が可能となる重要な知見を得ることにも成功した。
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