研究実績の概要 |
昨年度に行った1,6-エンインの不斉合成では、アリールオキシメチル化の収率とプロパルギル化の立体選択性に課題を残したため、まずはA環フラグメントの合成経路の改善に取り組んだ。種々のアルキル化剤を用いてC4位第四級炭素の構築を試みたが、収率の改善には至らなかった。ただし、2-ナフチルメトキシメチルクロリドを用いた場合には、環状アセタールの形成後に異性体を容易に分離できることがわかった。アルキンのメチル化と二重結合の酸化開裂を行った後、Wittig反応によりアリルシラン部を導入して環化前駆体へと導いた。基質調製と並行して、モデル化合物を用いて6-エンド環化反応の最適化を行った。その結果、溶媒としてはジクロロメタンが最適であり、0°CでPh3PAuNTf2を作用させた場合に収率94%で環化生成物が異性体混合物として得られ、その異性体比は1.5:1であった。また、プロトン化の促進を期待して酢酸を添加すると、10時間を要した反応が4時間で完結した。次に位置選択性の改善を目指して金触媒のリガンドを検討した。NHC配位子を持つ金錯体から調製した触媒を用いると、位置選択性は2.7:1であった。一方、かさ高いホスフィン配位子用いた場合に20:1以上の高い6-エンド選択性が得られることを見出した。なお、対イオンの種類は位置選択性に影響を与えないことがわかった。続いて最適条件下でシラシロシドE-1のA環形成を試みた結果、望みとする6-エンド環化生成物を得ることができた。
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