研究課題/領域番号 |
16K08173
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
渡邉 一弘 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (10382673)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キセニカン骨格 / キセニアラクトール / 環拡大反応 / 抗リーシュマニア活性 / 抗がん活性 / 抗トリパノソーマ活性 / 天然物合成 / 9員環 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、抗がん活性、抗炎症活性(アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー型痴呆症など)、抗リーシュマニア活性および抗トリパノソーマ活性など有用な生物活性を有する9員環天然物群の系統的な合成法の開発を目的として行う。今年度は、抗がん活性を有する9-デオキシキセニアラクトールCの側鎖導入法の検討および抗リーシュマニア活性を有するクリスタキセニシンAのカップリング反応を検討した。特に、9-デオキシキセニアラクトールCの合成研究に関しては、昨年度まで母核である9員環骨格の構築を達成しているので、その合成中間体から側鎖導入の足がかりとなるケトン体への合成を検討した。すなわち、光学活性なヘイオース-パリッシュケトンを出発物質とし、10工程で誘導したニトリル体に対して、PMB(p-メトキシベンジル)基を脱保護後、西沢-グリーコ反応によりオレフィン体へと誘導した。次いで、四酸化オスミウムによりジオール体とした後、そのジオールをメトキシフェニルメチル基で保護し、さらに低温下、水素化ジイソブチルアルミニウムを作用させ、二級水酸基をPMB基で保護した一級アルコール体を合成した。その際、反応温度によりニトリルも同時に還元され、後処理で生じたアルデヒドに対して一級アルコール部が巻き込んだ望むラクトール体が低収率ながら一段階で得られることがわかった。現在、これらの収率の改善と環拡大反応に向けた検討を行っている。 クリスタキセニシンAの合成研究に関しては、前年度合成したシクロペンタノン体とδ-ラクトン体のカップリング反応を検討した。その結果、シクロペンタノンのケトン部に隣接する4級不斉中心が立体障害となり、種々反応条件検討したもののカップリング体を得ることができなかった。そこで、δ-ラクトンのβ位にアリル基を導入後、α位にオレフィンセグメントを導入する段階的な合成計画を立案し現在検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9-デオキシキセニアラクトールCの合成研究に関しては、昨年度確立した合成経路を基軸として、その合成中間体を活用して側鎖を導入する経路を立案し、合成研究の効率化を行っておりおおむね順調に進行している。最も困難であると考えられる環拡大反応も前年度の母核合成で種々条件検討しており、側鎖導入後の基質に対しても同様に反応が進行すると期待される。また、新しいシーズを探索するプロジェクト(共同実験)として、これまで得られた合成中間体を生物系の研究者に提供する生物活性相関研究が進行中であり、今後の成果と発展が期待される。 一方、クリスタキセニシンAの合成研究に関しては、2つのセグメントのカップリング反応はうまく行かなかったが、両セグメントを新しい合成法に生かして利用することが可能であり、現在本計画に従って順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
9-デオキシキセニアラクトールCの合成研究においては、側鎖を導入するための足がかりの構築に成功したので、今後は鍵反応である環拡大反応を検討する予定である。また、種々の側鎖を導入することで9-デオキシキセニアラクトールCの類縁体を合成し、これらの類縁体および合成中間体の構造活性相関研究へ発展させ、本研究課題を創薬研究に展開する予定である。一方、クリスタキセニシンAの合成研究に関しては、既に合成したセグメントを有効に活用して合成研究の効率化を行いたいと考えている。さらに、クリスタキセニシンAの合成中間体から抗がん活性を有するプルミスクレリンAへ誘導するダイバージェント合成も検討することで、9員環化合物の系統的かつ多角的な合成も行う予定である。 今後、生命薬科学科の学生2名の協力により本研究課題研究の推進を図ると共に、昨年度、自動分取精製装置を購入しており、これを最大限活用することで合成研究の迅速化・効率化が可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
分取カラム用シリカゲルパックの在庫がなく、入荷が遅れたため次年度使用額が生じた。現在はすでに入手しており、その支払い分に使用する予定である。
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