研究課題
マングロマイシン類は、北里生命科学研究所創薬資源微生物学寄付講座において、希少放線菌の培養液中よりフィジコケミカルスクリーニングを用いて見出された新規天然物である。構造的特徴として炭素のみで連結した15員環骨格内に高度に置換されたテトラヒドロフラン環と5,6-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-αーピロンが渡環する点、また配座が固定された籠状構造をもつ点が挙げられる。生物活性評価の結果、マングロマイシン類は顧みられない熱帯病の一つである“アフリカ睡眠病”を引き起こすトリパノソーマ原虫に対して強力な増殖阻害活性を示すことが分かり、その特異な構造と生物活性の相関に興味が持たれる。また、昨年当研究室において A の不斉全合成を達成し、その絶対立体構造を決定した。一方、マングロマイシン類の発見後、富山県立大学の五十嵐らは放線菌NPS554株の培養液中より アカエオライドを単離・報告した。この化合物はマングロマイシンB と同様の平面構造を有するにもかかわらず、同じ条件下でのNMRデータの報告がされていない。また、比旋光度が異なることやケトーエノール互変異性が観測されることから立体異性体としてアカエオライドと命名されている。しかし、推定生合成経路から考えると同一化合物であることが示唆される。そこで、すでに全合成を達成したマングロマイシンAよりさらに4工程、収率95%でBを合成する方法を確立した。そして全合成したマングロマイシンBと天然のマングロマイシンBが同一であることよりBの絶対構造を決定した。さらに詳細な機器解析によりマングロマイシンBとアカエオライドが同一化合物であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
マングロマイシンAおよびBの初の全合成法を確立し、しかも両者の絶対構造を明らかにできた。さらに、類縁体として報告されているアカイオライドが、Bと完全に一致することを明らかにした。しかしながら、まだ合成法が長く、大量合成に向いていないので、今後より簡便な合成法を確立したい。
今後、より簡便な合成法を確立し、それらの絶対立体構造を明らかにしていく。また、全合成ルートが長いので、もっと簡便な合成法を確立していきたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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