研究課題
昨年当研究室においてマングロマイシンA(1)の不斉全合成を達成した。一方、五十嵐らは放線菌Streptomyces sp. NPS554株の培養液中よりアカエオライドを単離・報告した。この化合物はマングロマイシンB (2)と同様の平面構造を有するにもかかわらず、同じ条件下でのNMRデータの報告がされていない。また、比旋光度が異なることやケトエノール互変異性が観測されることから 2の立体異性体としてアカエオライド(4)と命名されている。そこで 2 の全合成経路の確立と絶対立体構造の決定を目的に2の全合成研究に着手した。合成した 1 のアセチル化によりエノール部位を保護し、最も反応性の高いC-9位水酸基選択的なメシル化を行なった。続いてDBUを用いた脱離反応により、オレフィン部位を構築し、最後にアセチル基を除去することで4工程、収率95%で2を合成した。合成した 2 のNMRデータは4 の文献値と良い一致を示した。加えて、NMR解析の結果から 2 は 4 と同様に測定溶媒によってケト-エノール互変異性が生じることを明らかにした。また、合成品 2 の比旋光度を測定したところ 2 の報告値とは異なり4 と一致した。そこで天然由来の 2 を再取得し、比旋光度を測定したところ合成品と近い値を示した。しかし、合成品、天然物いずれの比旋光度の値も測定するたびに変動することが明らかとなった。そのため、円二色性スペクトルを測定し、天然物、合成品ともに正のコットン効果を示すことを確認した。このことから 2 の絶対立体構造を決定し、2と4が同一化合物であることを明らかにした。筆者はマングロマイシンB (2)を34工程、総収率8.0%で初となる不斉全合成を達成した。さらに各種機器データを測定することでマングロマイシンB (2)とアカエオライド (4)が同一化合物であることを明らかにした。
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