研究目的 ルミナミシン(1)は北里研究所の大村らによって、Streptomyces sp. OMR-59株の培養液から抗嫌気性菌活性を示す新規天然物として見出された。1は、クロストリジウム属が引き起こす偽膜性大腸炎等の治療薬のリード化合物として期待されている。さらに、1は三環性酸素結束シスデカリン-マクロライドの特異な構造を有している。そこで、研究代表者は、1 の創薬展開を最終目標として設定し、その基盤研究となる 1 の合成経路の確立を目指す。また、確立した合成経路から導かれる誘導体合成を通じて構造活性相関の解明を試みる。 研究成果 まず、1の効率的かつ誘導化が可能になる全合成経路の確立を視野に入れ、課題の一つである三置換オレフィンを含む10員環ラクトンの構築を試みた。前年度までに三置換オレフィンを含まない10員環ラクトンの合成を達成したため、本年度は三置換オレフィンの構築を目指した。すなわち、三環性酸素結束シスデカリンと中央部ユニットをカップリングしたケトン体から三置換オレフィンを構築すべく検討を行った。ケトンに対してメチルリチウム等による求核付加を検討したところ、未反応の原料が定量的に回収された。この原因としてケトンのエノール化が懸念されたため、塩基として作用しにくく求核性を向上させるランタノイドを利用することとした。種々検討の結果、塩化ランタン(III)ビス(塩化リチウム)錯体とメチルリチウムを用いて調製した求核種が目的のカルボニル基に付加することを見いだした。その後、得られた第三級アルコールに対してバージェス試薬を用いた脱水反応条件に付したところ、所望の三置換オレフィンとエキソオレフィンの混合物を収率59%で得た。今後、本結果を基盤にして1の三置換オレフィンを含む10員環ラクトンの構築を行い、当初の目的の全合成を目指す。
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