研究課題/領域番号 |
16K08177
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 久央 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (70287457)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 天然有機化合物 / 全合成 / 不斉合成 / アルドール反応 |
研究実績の概要 |
当プロジェクトでは,特異な骨格を有する天然有機化合物(yonarolideとasperaculin A)について,分子内アルドール反応を基盤とした合成戦略に基づき,両天然有機化合物の効率的な全合成法の開発を目指すものである.まずyonarolideに関しては,2つのフラグメントを合成し,Diels-Alder反応による2つのフラグメントの結合と続く分子内アルドール反応による経路を提案し全合成を目指している.平成28年度においては(R)-カルボンを出発物質として用い,カルボンの6員環の酸化的開裂と続く分子内アルドール反応を駆使して7員環を再構築し,いくつかの官能基変換を経てDiels-Alder反応のためのジエンの合成を目指した.その結果,7員環を有するビスシリルエノールエーテルとしてジエンの構築に成功するに至った.現在このものを用いてDiels-Alder反応による2つのフラグメントの結合に関する検討を開始したところである. 次にasperaculin Aに関し,平成28年度はラセミ体での全合成を目指し,3環性骨格の構築について各工程の最適化研究を行った.その結果,問題があった工程でほとんど収率の改善に成功し,さらに若干合成経路を修正することで最も問題であったJohnson-Claisen転位反応による3環性骨格構築段階の収率に大幅な改善が見られ,最先端すなわち全合成達成を目指した研究を遂行するための化合物の安定供給が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの天然有機化合物(yonarolideとasperaculin A)の全合成研究に関し,申請書に記載した通りの進捗状況であり,順調に進展していると考えている.Yonarolideの全合成研究に関しては当初予定していたDiels-Alder反応のためのジエンの合成に成功した.Asperaculin Aの全合成研究に関しては,各工程について精査を行い,若干経路を変更することで最先端まで化合物を安定に供給できることになった.この成果に関し3月の日本薬学会年会にて発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はまず,yonarolideに関し,合成に成功したジエンを用いてDiels-Alder反応の検討を行う.まずは合成したジエンを用いてモデル化合物のジエノフィルに対するDiels-Alder反応を検討し,反応条件すなわち熱反応とLewis酸触媒を用いる条件を検討してDiels-Alder付加体を得る.この段階で学会発表を行う予定である.Diels-Alder反応の条件が確定次第,天然物全合成につながるジエノフィルを用いてDiels-Alder反応を行い,引き続き分子内アルドール反応を駆使して全合成達成を目指す. Asperaculin Aに関しては,担当者の卒業により担当する学生が変わり,一時的に進展速度は遅くなると考えられる.しかし最先端研究を行うための化合物の安定供給が可能となったため,化合物を供給し全合成を目指した最終段階について検討を行う.
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