当プロジェクトでは,特異な骨格を有する海洋生物由来の多官能基化された多環式テルペノイド(主としてyonarolideとasperaculin A)の,分子内アルドール反応を基盤とした効率的な不斉全合成経路の開発について検討を行っている. まずyonarolideに関し,分子内アルドール反応を駆使した合成戦略に基づき2つのフラグメントを合成し,Diels-Alder反応を用いて2つのフラグメントを結合させたのち,さらに分子内アルドール反応を用いて全合成を達成する経路について検討している.平成30年度までに合成に成功した7員環を有するジエンとジエノフィルとのDiels-Alder反応について詳細に検討を行った.しかしながらマレイミドなどの高活性ジエノフィルを用いても若干反応は進行するものの有意な収率で付加体を得ることができなかった.そこで合成経路を見直しDiels-Alder反応を先に行ったのちに7員環をCope転位により構築することとした.この経路に従い,Diels-Alder反応に成功しCope転位を行う中間体の合成まで後少しのところまで来ている. 次にasperaculin Aの全合成に関し検討を行った.平成30年度までに3環性骨格の構築について成功している.このものに対し最後の環であるラクトン環の構築に成功し,4環性骨格の合成に成功した.最後の水酸基の立体選択的導入に関し検討を行ったが,まだ成功に至っていない.現在,ブロモヒドリン化を経由する立体反転を伴った水酸基の立体選択的導入による全合成達成に向け検討を行っている.
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