研究課題/領域番号 |
16K08178
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
三浦 剛 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40297023)
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研究分担者 |
平島 真一 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80642264)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機化学 / 触媒・化学プロセス / 薬学 |
研究実績の概要 |
有機分子触媒を用いた立体選択的な反応は,環境に優しい合成法として近年注目を集め,医薬品合成への応用が期待されている。有機分子触媒の中でも,チオウレア型,およびスクアラミド型の有機分子触媒は優れた触媒活性を示し,多くのタイプの触媒が報告されている。しかし,その触媒効率(高用量,長時間の反応時間)は必ずしも満足できるものではなく,より効率的な有機分子触媒の開発が待ち望まれている。そこで,これまで例の無いプッシュ・プル-エチレン型の不斉有機分子触媒を開発し,種々の不斉反応に応用するすることを目的に本研究に取組んだ。今年度では,これまでに開発したジアミノメチレンマロノニトリル型のプッシュ・プル-エチレン有機分子触媒を用いて,5-ベンジルフルフラールとニトロアルケンの立体選択的共役付加反応に適用し,既存の有機分子触媒よりも優れた立体選択性で目的の付加体を得ることに成功した。さらに,同タイプの有機分子触媒を用いたα-シアノケトンのエノン類への不斉共役付加反応への応用についても成功した。本方法論は,既知の金属触媒を用いた方法と比較して,より高い立体選択性を達成しており,有機分子触媒を用いた初の報告例である。また,昨年度より継続して行っているシアノ基以外の電子求引基を導入したプッシュ・プル-エチレン型有機分子触媒を用いた直接的不斉アルドー反応の基質一般性も明らかにし,より電子求引性の強い官能基導入が触媒活性の改善に寄与することも明らかとした。本研究成果は,Synlett誌において論文報告を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジアミノメチレンマロノニトリル型のプッシュ・プル-エチレン有機分子触媒のライブラリー構築がほぼ達成できており,その内の数種類は,既存の方法論を凌駕する立体選択性を達成するに至っている。また,スルホン基を中心とする他の電子求引基を導入したプッシュ・プル-エチレン有機分子触媒のライブラリー構築および立体選択的炭素炭素結合形成反応への応用も達成した。以上の研究成果を踏まえ,本研究課題はおおむね順調進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,さらなるプッシュ・プル-エチレン型有機分子触媒のライブラリー構築拡大を推進するとともに,これまでに報告例の無い有用な有機分子触媒反応の開発を目指す。さらに,開発したプッシュ・プル-エチレン型有機分子触媒を用いた不斉反応によって得られるキラルな鍵中間体より,医薬品の合成研究に展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた有機分子触媒ライブラリーの構築が順調に進み,触媒合成のための試薬費用が大幅に削減できた。さらに,ターゲットとする立体選択的な有機触媒反応も,予想よりも早期に発見することができた。その結果,約59万円を次年度に持ち越した。次年度は,触媒ライブラリーの更なる構築と生理活性化合物合成に研究費を投じると共に,順調に達成されいる研究成果を国内外の学会発表するための旅費等にも割り当てる予定である。
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