研究課題/領域番号 |
16K08183
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 准教授 (90583873)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 転位 / アルカロイド / 第4級アンモニウム / 連続反応 / 含窒素複素環 |
研究実績の概要 |
3-aza-Cope-Mannich連続反応の開発を目指し、L-プロリン、D-ピペコリン酸から、原料となるメチルビニルエーテル合成法を確立した。これをクロロエチル化したのち、様々なメチル化剤で第4級アンモニウム化の検討を行った結果、メチルトリフラートを用いた際に良好な収率選択性で第4級アンモニウムが得られることを明らかにした。また、その後の脱離反応に用いる塩基の検討により、ビニルアンモニウム化して、これを加熱条件化で転位させると目的の3-aza-Cope転位-Mannich連続反応が進行していることが確認された。各工程のアンモニウム塩は、我々が開発したテトラシアノシクロペンタジエニドアニオンを用いたアンモニウム塩の抽出法を用いて単離し、NMRでその生成と純度を確認した。また、トリブロミドを基質として、スピロ第4級アンモニウム塩を合成したが、これを経由する反応では、通算で収率が20%程度と改善の余地はあるものの、単一のジアステレオマーで期待通りの3環性含窒素化合物を得ることに成功した。また、単環性システムから一挙に連続反応をへて3環性骨格ができることも見いだしており、収率改善も目指しながら今年度も研究を継続する予定である。 その他、本課題遂行中に、アンモニウム塩抽出の道具として独自に開発したテトラシアノシクロペンタジエニド類の物性についても調査を行い、3,3'位に置換基をもつBINOLエステルにおいて、珍しいC-O結合を軸とする回転異性体が生じることを明らかにした。この回転障壁を温度可変NMRを用いて測定し、C-O結合の不斉軸としての新たな可能性を見いだすことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に目標にしていたのは、ビニルアンモニウム基質合成法~単純なシステムでの転位-連続反応の実施とその確率である。基質合成については、立体選択性に未だ課題を残す部分はあるが、かなり確立されつつある。また、そこからの転位ーMannich連続反応についても、収率に課題は残っているものの選択性よく進行が確認されたため、1年目に予定していた目標はかなりの部分が達成できていると思う。 また、テトラシアノシクロペンタジエニド類が、アンモニウム塩の抽出にかなり有効であることも同時に明らかになっているため、この観点からも新たな研究目標へと派生させることが可能になりつつあり、課題となっている研究については、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討において、スピロ第4級アンモニウム塩を経由する反応において、3環性含窒素複素環が得られることが明らかになっている。しかしながら、通算で収率が25%程度と未だ改善の余地があり、塩基、脱離基、酸素上官能基、溶媒などの検討を通じてこの収率改善を目指したい。収率が改善した後は、その条件を参考に、環サイズが異なる基質、エキソ型オレフィンを含む基質、ベンゼン環と縮環している基質などの検討を行う予定である。 また、研究がよく進展した場合はは、天然物合成に着手する予定である。 その一方で、これまでの研究でテトラシアノシクロペンタジエニド類が、アンモニウム塩の抽出にかなり有効であることも明らかになった。アンモニウム塩の抽出法の開拓も興味深い上に本研究課題にも応用できるため、アンモニウム塩の置換基、テトラシアノシクロペンタジエニド塩上の置換基などを検討し、研究を展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、基質についても少量で検討することが多く、予定より試薬/溶媒の購入料が少なかったこと、当初は、研究協力者を学会発表させる予定であったが、都合が付かずに見送ったことなどによって、予定よりも使用金額が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展に伴い、さらなる試薬購入が必要となるため、試薬購入に振り当てる。また、反応開発が進むに連れて理論面でのサポートも必要となってきているが、最近になって反応機構解析のソフトウェア(Reaction Plus Pro、60万円)が発売され、研究の大きな手助けとなることが見込まれるので、この購入費にあてる予定である。
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