研究課題/領域番号 |
16K08186
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
土肥 寿文 立命館大学, 薬学部, 准教授 (50423116)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 合成化学 |
研究実績の概要 |
酸化反応は官能基変換や結合形成法として重要であり、古くから重金属酸化剤がこの目的に使用されたが、いずれも重篤な毒性を示すことが問題であった。このような背景下、本研究では申請者らが最近見出した超原子価ヨウ素化合物を量論量用いた芳香環の新しい酸化的カップリングについての研究をさらに深化させるための、高活性有機ヨウ素触媒の開発を行う。 平成28年度は、環境調和型酸化反応の開発に適う有機触媒の創生を目指し、期間全体の研究の鍵となる有機ヨウ素触媒と酸化的カップリング法の開発を精力的に行った。具体的には、芳香環の酸化的カップリングにおいて、同種芳香環のカップリングや過剰酸化を防ぐための原料間および原料-生成物間の優れた基質認識が可能な触媒活性種として、高い反応性と化学選択性を併せ持った新規架橋型超原子価ヨウ素触媒を用いた反応系を確立した。また、架橋型超原子価ヨウ素触媒の特異な水溶性を活かし、アンモニウム塩などの水溶性構造の導入等の工夫を加えることで、回収と再利用可能な機能性ヨウ素触媒の開発とそれを用いた環境調和型酸化反応の実現にも成功した。さらに、次年度以降に予定していたフェノール類の酸化的カップリングへの応用についての研究を前倒しで行い、超原子価ヨウ素触媒を利用したフェノールどうしの選択的な酸化的クロスカップリングを実現した。
以上について、研究成果を学会や研究会、学術論文として発表し、本研究の学術的な評価の確立の一助とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に掲げた当初の研究計画を前倒しで実施し、目標を概ね達成できている。具体的には平成28年度に計画していた内容について、目標としていた性能を持つ触媒の開発が当初予定よりも円滑に進んだため、次年度以降に予定していたフェノール類の酸化的カップリングへの応用についての研究を前倒しで行えた状況となっている。これに加え、当初の研究計画予定の範疇を超えた斬新な新規合成反応の開拓にも展開できている。研究成果の公表についても計画通り行い、研究経費についても予定どおり無駄なく活用できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、申請書に掲げた研究計画を完遂しつつ、発展的なテーマの開拓を行う。触媒の開発について、平成29年度は有機ヨウ素触媒の多機能化を目指した機能スィッチ型触媒の開発を行う。ヨウ素は3価の超原子価状態では高活性な酸化触媒として働き、適切な分子設計により1価の状態ではハロゲン結合に基づく新しいルイス酸触媒として機能させることができる。触媒の合成については概ね前年度に完了したため、今後はこのような酸化-還元による機能スィッチ型の有機ヨウ素触媒の性能評価について、種々の触媒反応を検討する。また、申請者らの開発する新規触媒は軸性キラリティーを有しており、高選択的な不斉反応に有望である。そこで当初の計画を前倒しとし、基質認識能や立体選択性、官能基選択性がより高い新しい有機ヨウ素触媒を創生する。 一般に官能基を消費して結合形成を行う金属を用いる合成法に対して、申請者の開発する酸化的カップリングでは官能基が残った化合物が得られることを活かし、酸化的カップリングの合成的利用展開として、申請者らの方法で得られた有用な合成中間体を活かし、高度に酸化された芳香環由来天然物や機能性物質の骨格構築を意識した合成研究を行う。
本課題終了後の展開を見据えた新しく発展的なテーマの開拓も重要で、研究の過程で新しく重要と思われるテーマが生じた場合、その都度、研究計画への追加の是非を判断する。メタルフリーな酸化的カップリング法は世界中で注目されている分野であり、日進月歩での研究開発が繰り広げられている。本分野における先駆性を保つためには、早急な研究展開を実施することが必要であるため、本課題研究を当初より前倒しで完了することを目指し、発展的な研究へとつなげるための前年度申請についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末における不良品文具の返品により発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
本未使用額については、当初目的に対し、次年度に速やかに執行する。
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