研究実績の概要 |
遷移金属を触媒として用いる炭素-水素結合官能基化(C-H 官能基化)は,効率性および環境調和性を指向した有機合成を可能とする手法として,近年非常に注目を集めている.申請者はこれまで,パラジウムやルテニウムを触媒とした C-H 官能基化を経由する分子内炭素-ヘテロ原子結合形成プロセス(C-H 閉環反応)により,種々の複素環化合物の新規かつ効率的構築法の開発を行ってきた.今回申請者は,ウラシルを部分骨格として有するベンズアミジン化合物に対して分子内 C-H アミノ化反応を行うことで,様々な置換パターンを有するキサンチン化合物が効率的に得られる反応系を見出した.触媒としては「銅」が最も適しており,これと再酸化剤であるヨードベンゼンジアセテートを組み合わせた触媒系を用いることで,所望のキサンチン類が収率よく得られることが分かった.塩基の添加は必須であり,様々な塩基性化合物のスクリーニングの結果,炭酸カリウムが有効であった.また溶媒の選択も重要であり,広範な条件検討を行った結果, DMSO/pyridine (1/1) という溶媒系を用いた際に,最もよい結果を与えることが判明した.キサンチン類は,テオフィリンやカフェインをはじめとする広範な生理活性化合物の母核として存在する,極めて重要な複素環の 1 つであるが,これまで基質一般的な合成法はほとんど報告されていない.本手法により,1, 3, 7, 8 位に様々な官能基を有する多置換キサンチン類が効率的に得られる.極めて実用的な,新規キサンチン構築法を提供できたと考えている.
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