研究課題/領域番号 |
16K08187
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
稲本 浄文 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (30359533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炭素-水素結合官能基化 / 銅触媒 / アミノ化 / 複素環化合物 / キサンチン |
研究実績の概要 |
自然界に遍在する,化学的に不活性な炭素-水素結合 (C-H) を遷移金属を触媒として用いることにより活性化し官能基化する手法,いわゆる C-H 官能基化は,高効率的かつ低環境負荷型の有機合成を提供できるとして,近年大きな注目を集めている.申請者はこれまで,パラジウムやルテニウムなどを触媒として用いた C-H 官能基化を経由する炭素-ヘテロ原子結合形成反応に関する研究に注力してきた.特にこれを分子内プロセスへ適用することにより,様々な複素環化合物が効率的に構築できることを見出し,発表している.ごく最近,ウラシル骨格を有するベンズアミジン誘導体に対して銅触媒を適用することによる,分子内 C-H アミノ化反応を経由したキサンチン化合物の新規合成ルートを見出していた.しかしながら,基質適用範囲が狭い点や用いる触媒量が 20 mol% と比較的多いなど,改善の余地を残していた.そこで今回,さらなる検討を行った結果,キサンチン骨格の 1 位と 3 位の窒素原子上の置換基としてフェニル基をもつ化合物合成においても,円滑に所望の閉環プロセスが進行することを明らかとした.これにより,これまで合成が困難であった種々の置換パターンを有するキサンチン類をより容易に調製することが可能となった.一方,触媒量の低減化に関する検討も広範に行った.用いる酸化剤の種類および当量数を中心として,様々なパラメーターのスクリーニングを再検討したが,現在までのところ,本目的の達成には至っていない.一方で本検討の最中に,銅触媒以外の遷移金属も,本閉環反応を促進することが分かった.いまだ予備的な実験結果しか得られていないものの,基質適用範囲あるいは触媒量といった観点から,より高活性な触媒系の確立につながる可能性がある.これについても,今後引き続き検討を行っていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的のひとつであった「C-H 官能基化を利用した複素環構築における基質適用範囲の拡大」に関しては,「研究実績の概要」の項で記述したように進展がみられており,研究はおおむね順調に進展しているものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
分子内 C-H 官能基化を利用する複素環構築におけるさらなる適用範囲の拡大をはかるとともに,エナンチオ選択的プロセスやタンデム型触媒プロセスへの展開といった応用的研究課題も同時に推し進め,新規分子変換プロセスの開発を広範に展開する.
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