化学的に不活性な炭素-水素結合 (C-H) を遷移金属を用いて触媒的に活性化(切断)し,官能基化する手法,いわゆる「C-H 官能基化」は,高効率的・低環境負荷型の有機合成を提供できるなど,様々な観点から有用であり,近年非常に注目を集めている研究分野である. 申請者はこれまで,C-H 官能基化を鍵反応として,特にこれを分子内プロセスに適用することで,多様な複素環化合物が構築可能であることを示してきた.本研究の過程で,ウラシル骨格を有するベンズアミジン誘導体に対して触媒的分子内 C-H アミノ化反応をおこなうことで,キサンチン誘導体の構築が可能であることを見出した.触媒としては,他の遷移金属に比べてより安価,低毒性である「銅」が適していることが判明し,これと再酸化剤であるヨードベンゼンジアセテートの組み合わせを触媒系に用いることで,所望のキサンチン類が効率的に得られた.収率よく所望の生成物を得るためには,20 mol % の銅という比較的高い触媒ローディングが必要ではあったものの,様々な置換パターンを有するキサンチン誘導体の,これまでにない新規な合成ルートを提供できた.引き続き種々の条件スクリーニングをおこない,触媒ローディングの低減化とともに,さらなる基質適用範囲の拡大を進めていく予定である. また上記研究の過程で,イソシアネート類存在下,オルトアルキニルフェニルスルフィドに対してロジウム触媒を作用させることで,閉環と続く 3 位でのカルボキシアミド化が進行する,という興味深い知見も得られた.3 位にアミド部分をもつベンゾチオフェン骨格の新規構築法として,意義深い発見といえる.さらに詳細な反応条件スクリーニングを予定している.
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