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2018 年度 実施状況報告書

触媒的なラジカル生成を基盤した合成反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K08188
研究機関兵庫医療大学

研究代表者

宮部 豪人  兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (10289035)

研究分担者 甲谷 繁  兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (00242529)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード有機合成 / 触媒 / 光触媒 / ラジカル / 有機染料 / 酸化 / 還元
研究実績の概要

アニオンやカチオンを用いる反応は、昔から研究されている分野であるのに対し、ラジカルを活用する反応は、比較的研究が進んでおらず、未解決な問題も数多く残されている。重要な未解決問題として、現在のラジカル合成反応では、ラジカル種の発生に過剰の試薬を用いる場合が多く、環境への負荷が大きいことが挙げられる。私たちは、ラジカル合成化学が飛躍的に発展するためには、“ラジカル反応の触媒化”が不可欠であると考えて、触媒化研究に取り組んでいる。特に、酸化剤としても還元剤としても働く“光触媒”に着目し、 “触媒的なラジカル合成反応”の開発を行っている。
前年度までに、光触媒として、有機色素を活用したアルケン類の酸化反応に着目し、犠牲試薬として機能する酸化剤や塩基の影響を調べた。これまでに、シンナムアルデヒド類の酸化的ラジカル反応の研究では、シンナムアルデヒド類のアルケン部とホルミル基を部位選択的に酸化することに成功した。また、酸化チタンに不斉源となるキラル分子を担持させることにより、芳香族ケトンの還元反応において、不斉誘起が可能であることを見出した。
今回、光触媒として有機染料を活用したシンナムアルデヒド類の酸化的ラジカル反応の研究で見出した部位選択的酸化反応の反応機構を考察するために、いくつかのシンナムアルデヒド誘導体や他の基質などを用いて、部位選択的酸化反応を深く検討した。また、酸化チタンを用いた不斉誘起反応に関しては、酸化チタンの種類が反応効率や不斉誘起におよぼす影響を調べた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シンナムアルデヒド類の部位選択的酸化では、いくつかの有機染料を有機光触媒として検討したところ、酸化力が強いRhodamine 6Gが、本酸化反応に最も良い光触媒であることがわかった。アルケン部の選択的な酸化では、強めの塩基が効果的であること、酸素非存在下でも反応が進行すること、ラジカルを効率的に補足できる酸化剤が良いことなどがわかり、酸素による酸化と酸化剤によるラジカル補足を経由する二つの反応機構が考えられることがわかった。一方、Rhodamine 6GとNHC触媒の二つの有機触媒を同時に用いるホルミル基の選択的な酸化では、酸化剤のラジカルを補足できる能力により反応効率が大きく変わることから、反応機構として、中間体を有機光触媒が酸化する経路と酸化剤がラジカルを補足する経由が考えられることがわかった。酸化チタンを用いた不斉誘起反応においては、不斉源となるキラル分子により不斉誘起効率が変化するだけでなく、酸化チタンの種類が不斉誘起効率に大きな影響を与えることがわかった。反応場となる酸化チタン表面形状が、基質やキラル分子の吸着などに大きく影響しているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

不飽和アルデヒド類のアルケン部の酸化に成功したので、次に、本反応の基質一般性を調べるために、不飽和ケトン類を用いた部位選択的な酸化反応を検討していく。特に、活性なα水素原子を有するケトン類や環状に固定されたケトン類の反応を調べ、適応範囲を明らかにしていく。同時に、得られる結果をもとに、考えられる二つの反応機構のうち、どちらの経路が主要な経路であるかも明らかにしたい。また、不飽和アルデヒド類のホルミル基の部位選択的な酸化反応に関しては、同じ反応条件でベンズアルデヒドも酸化できることがわかっているので、より一般的な酸化反応に拡張していく。ベンズアルデヒドの酸化反応は、不飽和アルデヒド類の酸化反応と異なる反応経由すると考えられるため、ベンズアルデヒドの酸化反応の主要反応機構を解明していく。さらに、芳香族ケトンの不斉還元反応の研究では、不斉源となるキラル分子のさらなる検討を行い、不斉収率の向上を目指して検討を続けていく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Oxidative Functionalization of Cinnamaldehyde Derivatives: Control of Chemoselectivity by Organophotocatalysis and Dual Organocatalysis2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka Eito、Inoue Maika、Nagoshi Yuka、Kobayashi Ayumi、Mizobuchi Rumiko、Kawashima Akira、Kohtani Shigeru、Miyabe Hideto
    • 雑誌名

      The Journal of Organic Chemistry

      巻: 83 ページ: 8962~8970

    • DOI

      10.1021/acs.joc.8b01099

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chiral α-hydroxy acid-coadsorbed TiO2 photocatalysts for asymmetric induction in hydrogenation of aromatic ketones2018

    • 著者名/発表者名
      Kohtani Shigeru、Kawashima Akira、Masuda Fumie、Sumi Momono、Kitagawa Yuichi、Yoshioka Eito、Hasegawa Yasuchika、Miyabe Hideto
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 54 ページ: 12610~12613

    • DOI

      10.1039/c8cc07295g

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 有機色素を使用した電子不足オレフィンのオキシヒドロキシル化反応の検討2019

    • 著者名/発表者名
      高橋 弘季、吉岡 英斗、鰐部 日夏李、本谷 有稀奈、初瀬 康希、甲谷 繁、宮部 豪人
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 酸化チタン上でのエナンチオ選択的光水素化反応におけるマンデル酸の酸化的分解2019

    • 著者名/発表者名
      小椋 茉春、角 桃乃、川島 祥、吉岡 英斗、宮部 豪人、甲谷 繁
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 酸化チタン結晶面と芳香族ケトンのエナンチオ選択的水素化反応との関連2019

    • 著者名/発表者名
      根来 弦輝、川島 祥、宮部 豪人、大谷 文章、甲谷 繁
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 芳香族ケトンのエナンチオ選択的光水素化反応におけるTiO2結晶形の効果2018

    • 著者名/発表者名
      甲谷 繁、角 桃乃、小椋 茉春、川島 祥、吉岡 英斗、北川 裕一、長谷川 靖哉、宮部 豪人
    • 学会等名
      2018年光化学討論会
  • [備考] 兵庫医療大学薬品化学研究室

    • URL

      http://www2.huhs.ac.jp/~h070012h/

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公開日: 2019-12-27  

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