研究課題/領域番号 |
16K08190
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森部 久仁一 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (50266350)
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研究分担者 |
東 顕二郎 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (40451760)
植田 圭祐 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (40755972)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡(AFM) / 液中測定 / ナノ粒子 / 構造評価 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
リポソーム製剤の調製と物性評価:モデル薬物としてドキソルビシンをpH硫酸アンモニウム勾配法で封入したリポソームを、リン脂質(ジミリストイルホスファリジルコリン:DMPC、ジステアロイルホスファリジルコリン:DSPC):コレステロール モル比3:2にて調製した。ドキソルビシン封入量は脂質に対して0~40mol%とした。そして、原子間力顕微鏡(AFM)及びクライオ透過電子顕微鏡(cryo-TEM)を用いてリポソームの形態変化を詳細に評価した。 Cryo-TEM 測定の結果、ドキソルビシン封入量20%のリポソームでは内水相に直線状のドキソルビシン沈殿が観察された。ドキソルビシン封入量40%のリポソームの場合、直線状の沈殿に加えて湾曲した沈殿が観察された。AFM測定の結果、ドキソルビシン封入量20%以下のリポソームでは球形のリポソームが主に観察された。一方、ドキソルビシン封入量40%のリポソームでは球形に加え、伸長した形状(prolate)、回転楕円体の形状(oblate)及び回転楕円体のが中心部が凹んだ形状(concave) のリポソームに由来する像が観察された。リポソーム内水相の沈殿が直線的に成長し、リポソームの形態がprolateに変化したと推察した。ドキソルビシン封入量40%のリポソームにおいては、時間経過に伴いprolateリポソームの割合が減少し、oblate、concaveリポソームの割合が増加した。脂質二重膜の曲率が高くエネルギー的に不利なprolateリポソームが、膜の曲率が低く安定なoblateリポソームに変形したことによると推察した。このようなドキソルビシン封入リポソームの形態変化は、リポソーム内外相の浸透圧変化や温度変化でも観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リポソーム製剤の調製と物性評価に関しては、モデル薬物としてドキソルビシンを硫酸アンモニウム勾配法で封入したリポソームに関しての検討がほぼ終了した。リポソームの構造や物性に及ぼす脂質組成の影響及び薬物封入法や封入量の影響をAFMの形状測定及びフォースカーブ測定で検討し、薬物封入量が高くなるとリポソームの構造に影響することが明らかとなった。 ナノ結晶製剤の調製と物性評価に関しては、モデル薬物としてインドメタシンを、添加剤として、界面活性剤のPoloxamerを用い、遊星型ボールミルを用いて湿式粉砕によりナノ懸濁液を調製した。とくに、粒子径や懸濁ナノ粒子の結晶性に及ぼすインドメタシンの結晶形の影響について検討を行った。その結果、安定型及び準安定型の結晶を湿式粉砕した際には、得られた薬物ナノ粒子はもとの結晶形を維持すること、非晶質を用いた場合には準安定型に転移することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
リポソーム製剤の調製と物性評価に関しては、モデル薬物として引き続きドキソルビシンを用い、硫酸アンモニウム勾配法及びpH勾配法で封入したリポソームの構造や物性を比較する。とくに、封入の際の温度制御がリポソーム中の薬物の構造に影響する可能性が考えられるため、その点をAFMやTEM測定を併用して明らかにしていく。さらに、薬物としてトポテカン塩酸塩やビンクリスチン硫酸塩の封入を試み、薬物の封入と構造との関連をAFMの形状測定及びフォースカーブ測定で検討する。 H28年度の研究実績に記載した内容に関しては、論文化を行う。 ナノ結晶製剤の調製と物性評価に関しては、非晶質薬物ナノ懸濁液の調製と物性評価を試みる。具体的には非晶質成分を有するナノ懸濁液の調製が可能なピロキシカムと類似の構造を有するメロキシカムを用い、湿式粉砕法での調製を試みる。
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