研究課題/領域番号 |
16K08191
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 卓見 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (20451859)
|
研究分担者 |
嶋田 一夫 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (70196476) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | NMR / 蛋白質-蛋白質相互作用 / ユビキチン / 動的構造平衡 |
研究実績の概要 |
昨年度、T40Cにcysteaminyl-EDTAを付加したYUHに過剰量の均一2H,15N標識を施したユビキチンを添加した試料を用いて常磁性緩和増大の測定を行ない、ユビキチンアルデヒド-YUH複合体の結晶構造においてT40から離れたユビキチンのC末端に、顕著な常磁性緩和増大を観測した。今年度は、この緩和増大が、一段階目に形成される複合体Bに起因するかどうかを調べるために、均一2H,15N標識ユビキチンと、T40Cにcysteaminyl-EDTAを付加したYUHを用いて、複合体Bを形成しないユビキチンアルデヒド-YUH複合体を調製して、常磁性縦緩和増大および横緩和増大を測定した。その結果、結晶構造においてYUHのT40から離れたユビキチンのC末端には緩和増大は観測されなかった。一方、二段階目に形成される複合体Aの割合が野生型より低いことが予備的な実験で分かっている、YUHのC90L変異体に対して、過剰量の均一2H,15N標識ユビキチンを添加した試料では、ユビキチンのC末端領域に顕著な緩和増大が観測された。以上の結果から、昨年度の実験でユビキチンのC末端に観測された緩和増大が、複合体Bに由来することが示された。 次に、10種類の残基にcysteaminyl-EDTAを付加したYUHと均一2H,15N標識ユビキチンを用いて、常磁性縦緩和増大および横緩和増大を測定した。その結果、ユビキチン結合部位に隣接したcysteaminyl-EDTAを付加したYUHを用いた実験において、T40修飾体を用いた時と同様に、Ubal-YUH結晶構造では修飾部位から離れているユビキチンのC末端に顕著な緩和増大が観測された。以上の結果から、複合体Bでは、ユビキチンのC末端以外の領域は結晶構造と類似した様式でYUHと結合する一方、C末端領域は複数の構造を交換していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、昨年度観測したユビキチン-YUH複合体に起因する緩和増大が一段階目に形成される複合体Bに起因することを実証した上で、YUHの複数の残基にcysteaminyl-EDTAを付加したYUHを用いて緩和増大を観測する実験を行うことで、複合体Bにおけるユビキチンの結合様式の情報を取得することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 残り7種類の残基にcysteaminyl-EDTAを付加したYUHと均一2H,15N標識ユビキチンを用いて、常磁性縦緩和増大および横緩和増大を測定する。 (2) (1)の結果、および2017年度までに観測した常磁性緩和増大の結果を用いて、理論式に対するフィッティングを行い、複合体Bにおける、YUHに導入した常磁性プローブとユビキチン中の各アミド水素原子からの距離を決定する。 (3) (2) で得られた距離情報をXPLOR-NIHのアンサンブルリファインメント法に組み込んで、複合体Bの状態を可視化する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況 cysteaminyl-EDTA修飾YUHの調製に必要な試薬の一部の納品が、2017年度に間に合わなかった。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画: 当該助成金により、7種類のcysteaminyl-EDTA修飾YUHを調製して、過剰量の2H,15N標識ユビキチンを添加して、常磁性縦緩和増大および横緩和増大を測定する。翌年度分の助成金は、当初計画通り、YUHに導入した常磁性プローブとユビキチン中の各アミド水素原子からの距離の決定およびアンサンブルリファインメント法による複合体Bの状態の可視化に使用する。
|