研究課題/領域番号 |
16K08194
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 義明 京都大学, 薬学研究科, 講師 (60402799)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 膜貫通へリックス |
研究実績の概要 |
本研究では膜内で相互作用する膜貫通ヘリックスの片方をガラス基板上に固定した繋ぎ止め膜(テザ―膜)を作製し、蛍光標識したもう片方の分子と可逆に相互作用する際に、側方拡散が抑制される事を利用して蛍光相関分光法(FCS)や光褪色後蛍光回復法(FRAP)で相互作用力を迅速に評価しうる系を開発する。昨年度に引き続き、ポリエチレングリコール(PEG)でカバーガラス表面をコーティングし、かつ一部のPEGの先端に膜貫通ヘリックスを付加したガラス基板の作製を行った。ガラス表面への膜の固定が十分でなく、膜貫通ヘリックス上部に膜が存在しても膜挿入速度が遅い事が課題だった。コーティング手順を変更し、リン脂質DPPEとPEGの結合体DPPE-PEGを付加したカバーガラスに大きな一枚膜ベシクル(LUV)を添加しインキュベートすることで、自発的に膜融合が起き蛍光標識脂質の側方拡散が見られる条件を見出した。また、分子量の大きい消光剤であるblue dextranを添加することで、作製した平面膜の蛍光標識脂質の蛍光強度が約半分に減少したことから、膜の表側(ガラスと反対側)のみを消光でき、膜の裏表の区別が可能であることがわかった。また、DPPE-PEGの一部をDBCO-PEGに置き換えて、蛍光色素TMRで標識した膜貫通へリックスをDBCOに付加したところ、側方拡散しないペプチド由来の蛍光が観測され、ヘリックスが固定化されていることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定な平面膜の作製手順および、blue dextranを用いた膜の裏表を区別して消光する手法を見出す事ができた。今後、膜貫通ヘリックスの膜挿入の確認を行うことで、膜内へリックス相互作用による側方拡散測定を行う準備が整うと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、膜挿入時に膜の表側、裏側にそれぞれ蛍光色素が位置するように標識した膜貫通へリックスをガラス表面に固定化し、blue dextranを用いて、ヘリックスの平面膜への挿入を確認する。次に、蛍光色素Cy5で標識した膜貫通へリックスを膜に組み込み、固定化へリックスによって側方拡散が抑制される事、そこから見積もられる会合自由エネルギーが過去の測定値と一致することを確認する。計測法が確立すればチロシンキナーゼ型受容体ErbB1とErbB2の膜貫通部位のヘテロ会合を測定する。
|