本研究では膜内で相互作用する膜貫通ヘリックスの片方をガラス基板上に固定した繋ぎ止め膜(テザ―膜)を作製し、蛍光標識したもう片方の分子と可逆に相互作用する際に、側方拡散が抑制される事を利用して蛍光相関分光法(FCS)や光褪色後蛍光回復法(FRAP)で相互作用力を迅速に評価しうる系を開発する。昨年度に引き続き、ポリエチレングリコール(PEG)でカバーガラス表面をコーティングし、かつ一部のPEGの先端に膜貫通ヘリックスを付加したガラス基板の作製を行った。これまでに、ガラス表面への膜の固定が十分でなく、膜貫通ヘリックス上部に膜が存在しても膜挿入速度が遅い事が課題だった。コーティング手順を変更し、リン脂質DPPEとPEGの結合体DPPE-PEGを付加したカバーガラスに大きな一枚膜ベシクル(LUV)を添加しインキュベートし、さらに乾燥・再水和することで、より高効率で平面膜が得られることが明らかになった。また、これまで用いてきたblue dextranでは、膜の欠陥部位から色素が流入し膜の裏表が区別できない問題があるため、ビオチン標識した膜貫通ヘリックスDye-K(biotin)-AALALAA AGLALGA AALALAAをアビジン標識量子ドットで検出する方法を採用した。これらの改善により、モデル膜貫通ヘリックスを固定した状態で平面膜を形成できること、固定化したペプチドの膜挿入トポロジーをコントロールできることが明らかになった。
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