研究課題
αシヌクレインは生理的条件下でも構造を形成せず、環境によりアミロイドを形成しパーキンソン病を誘発する。A30PとA53T変異体は家族性パーキンソン病の患者に見られる変異体であり、前者は線維形成を遅くし後者は線維形成を速くにする。また両変異が同時に起こる場合には線維の形成量が多くになる。本研究では溶液NMRを使って解析し、アミロイドを形成する前段階において野生株と変異体で構造に違いがないかを、アミドプロトン交換とシグナル強度を用いて調べた。アミドプロトン交換速度定数を25℃と15℃で求め、その比の値により蛋白質構造の揺らぎの増加や構造形成の増加を評価した。A30Pの変異ではC端領域の揺らぎ構造の増加が見られた。また一方、変異の部位を含むN端領域の一部では両変異体において構造化の上昇が観測された。この部分の初期段階の構造化によって、線維の核形成速度が上昇すると考えた。シグナル強度が上昇する場合、その部位の揺らぎが上昇したと考え解析した。A30PにおいてC端領域の揺らぎ構造が上昇した。シグナル強度を測定し、温度を変えた時のシグナル強度の比を求めた。シグナル強度比からも、両変異体においてC端領域で揺らぎの増加が観測された。さらにA30Pにおいては、N端領域の一部の安定化と揺らぎ構造の増加が見られた。シグナル強度は複雑であり揺らぎ構造と関係するが、揺らぎ構造が増えて水との交換が速くなった場合には逆に減少する。しかし他のデータでは横緩和T2の結果は野生株の場合、N端領域とC端領域の化学交換を示唆する結果であり、xNOEの結果も、野生株においてN端領域とC端領域において構造ができていた。このように溶液構造中でも野生株と変異体間で構造の差が見られた。N端領域の変異の影響がC端領域に観測されたので、天然変性度の高いαシヌクレインであっても構造形成または複合体形成のおこることが示された。
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Biochimica et Biophysica Acta-Proteins and Proteomics
巻: 1868 ページ: PMID32497661
10.1016/j.bbapap.2020.140464