研究課題/領域番号 |
16K08207
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
定金 豊 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60293304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光反応基 / ファージ / コンフォメーション病 / 分析化学 / 遺伝子工学 / アミノ酸 / 老化 |
研究実績の概要 |
アスパラギン(Asn)残基およびアスパラギン酸(Asp)残基が自発的に構造変化を引き起こし,さらに内在性修復酵素PCMTの働きにより,老化タンパク質では副次的にD-isoAsp残基が蓄積することが明らかになっている.この現象に着目しD-isoAsp残基の解析ツールを独自の光化学的新技術「フォトパニング法」で開発し,老化タンパク質の効率的かつ網羅的な解析法を確立し,脳内の老化タンパク質を特定し加齢性疾患の発症機構の解明に繋げることが本研究の目的である.本年度は,フォトパニング法を用いて,老化しやすい構造をもつタンパク質群の網羅的な同定法について検討した. 【計画①】カルモジュリン(CaM)のAsn残基は脱アミド化しやすくPCMTの基質になることが知られている.モデル実験としてCaMとPCMTとの組合せを用い,老化しやすい構造をもつタンパク質の網羅的解析法の礎とした.非変性電気泳動法および修復酵素PCMTを用いた実験により,CaMのAsn残基の脱アミドがどのような条件のときに,どれくらいの速さで進行するかを調べ,モデル実験の基礎的データを得た.① CaM提示するファージを作成し,提示されたCaMが機能を有しているかをCaM結合ペプチドの結合活性で評価した.② 修復酵素PCMTに遺伝子工学的にCys残基を導入し,光反応基を組込む足がかりを構築した.thiosulfonate基をもつ光反応基と混合して,光反応性PCMTを作製した.③これらに結合活性があるかをフォトパニング法で解析した.その結果,一定時間静置したCaM提示ファージにおいて結合活性が高くなる結果が得られたが,安定した結果を得るためには選択条件の最適化もしくはPCMTの光反応基の導入位置の最適化が必要であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,フォトパニング法を用いて,老化しやすい構造をもつタンパク質群の網羅的な同定法について検討することを目的としていた.具体的には,① モデル実験としてCaMとPCMTとの組合せを用い,老化しやすい構造をもつタンパク質の網羅的解析法を確立する.② ヒト脳cDNA発現提示ファージライブラリーでフォトパニングを実施し,網羅的解析を行う.ことを計画していたが,本年度は①のモデル実験のみの実施となった.①のモデル実験の検討に予想以上に時間がかかったこと,さらに実験補助者の採用が遅れたことが,目標達成を到達できなかった原因であると考えている.とはいえ,モデル実験で得た基礎的データは本研究を支える重要な知見を示してくれており,総合的に考えると時間をかけても良いと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
申請書の計画進行表どおりに実験を進めていく.具体的には上記の② ヒト脳cDNA発現提示ファージライブラリーでフォトパニングを実施し,網羅的解析を行う.を次年度に実施する.① モデル実験としてCaMとPCMTとの組合せを用い,老化しやすい構造をもつタンパク質の網羅的解析法を確立する.で得られた基礎的データをもとに,実験補助者とともに,網羅的解析が可能な解析系を組み立てることに注力する.さらに,当初計画どおり,次年度の計画案 「進化分子工学とフォトパニング法の組合せによるD-isoAsp残基修復酵素の創生」にも,できるだけ早く着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
1)発注していた試薬の一部がメーカーの都合で生産が遅れ,納期が次年度以降となったため,2)実験補助者の採用が遅れ,人件費の一部が未消化のため が主な理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
1)次年度に納品予定の試薬の支払いに当る.2)実験補助者の労働時間を増すために利用する.
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